第1話 ドキドキ!初デート

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車やバイクには、注意をしている。 今は、この一本道の前からも後ろからも、エンジンの音は聞こえない。 春なのに、強い日差しに首の裏が、じわっと焼かれるけど桜の匂いを運ぶ風は涼しい。 でも、焦る! 今日、三月二十九日の日曜日は、ここ、朱鷺丘(ときおか)市の『さくらまつり』だ。 市の真ん中を通るこの道、通称『さくら通り』は道幅はせまいけれど、日本一の桜並木と言われている。 毎年、桜が満開になる3月末の日曜日に開催される花見大会が、さくらまつりなんだ。 そして今日は、ぼくにとって、生まれて初めてのデートの日だ。 男子は、ぼく八島(やしま)ヒカルと天野(あまの)ハルの二人。 ぼくとハルは幼稚園からの腐れ縁。まあ、親友かな。 女子は、神奈(かんな)サキと神奈チリの双子の姉妹。 ぼくたち四人は、二週間前に同じ朱鷺丘第一小学校を卒業したばかり。 今は、中学生になる前の春休みだ。 ぼくたちは、四月にそのまま朱鷺丘中学校の一年生になる。 グループデートなのは、仕方がない。 ぼくとハルは、男子ばかりの剣道クラブに加入していたから、今まで女子と付き合った経験がない。 ――あっ、デートをしたことがないのは剣道のせいばかりとは言えないけど、稽古のあと、女子たちに「お前らの汗、納豆くさ!」と避けられ続けたことは、関係があると思うんだよね。 「このまま、デートもしたこともないお子チャマで、中学生になれないよな」 卒業式直後の教室。 ハルはそうつぶやくと、男子の憧れである神奈サキに、 「ねえねえ、今度のさくらまつりさ。オレたちと、ナンチャッテデートしない? サキたちのボディガードになるからさ」 と、なれなれしく誘ったのだ。
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