第1話 ドキドキ!初デート

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そのとき、クラス中の男子が凍りついた。 サキは神々しいほどの美しさと知性を持ち、ミニバスケットボールクラブのエースで、抜群の運動神経も兼ね備えている。 そしてなにより、まぶしいほどのほがらかな性格の持ち主だ。 そんなサキに声をかける勇気を持つ男子なんて、小学校の六年間、誰もいなかった。 「いいよ。デートごっこね。オレたちっていうのは、ハルのほかはヒカルでしょ? あたしとチリも、さくらまつりに行きたかったの」 ――うそ! 誘えちゃったの? あっけにとられていると、突然、背中をバシンと叩かれた。 衝撃の強さによろけて振り返ると、野球クラブのキャプテン平里(ひらさと)ダイチが、顔を引きつらせて立っていた。 「お前ら、サキのこと、軽薄な誘い方しやがって。オレもさくらまつりに行くけど、見張っているからな。サキと手をつないだりしてみろ。ボコッてやる!」 ――うひゃー。こいつマジだ。嫉妬の炎だ! ぼくは、簡単にボコられてしまうような男子ではないけれど、それでもダイチの本気度に背筋が寒くなったので、そのときは、目をそらして無視した。 そして、デート当日の朝が今。ぼくは、心臓をバクバクさせている。 デートに緊張しているからじゃない。 デートに遅れそうだからだ! 焦る! ペダルをグルグル回して、坂道を駆け下る。 ――大丈夫。間に合う! 前方に、緩い右回りのカーブが現れた。 ――よし! このカーブを過ぎれば、『さくらさんさろ』まで百メートルだ。 速度を落とさず自転車を右に傾け、後輪を左に滑らせながら、カーブを曲がり切った。
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