第9話 夜、走る

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「じゃあ、行くよ」 そう言って、ぼくたちを促し、美術室のドアに歩き出したのはサキだった。 ぼくとハルは、サキに続いた。 ――すぐに行動! こういう状況になると、自然とリーダーはサキだよな……。 でも、チリは片付けにモタモタしていた。 「待って! 絵に白布をかけるから。机の上も片付けて、灯りも消さなきゃ」 「そんなこと、気にしなくていいよ!  どうせ二時間後には、オレたち、ここからいなくなるんだぜ」 ハルが、せかすように言った。 「だめだよ。あたしたちがいなくなった後の、この時空世界のあたしたちや周りの人に迷惑をかけられないよ」 ――こういうのを誠実って言うんだろうな。なんだろう、この気持ち。 好きっていうだけじゃなく、尊敬っていうか……。 「そうだよね。チリの言う通りだ」 自分の机に戻って、出しっぱなしタッチペンやデジタル教科書を片付けた。
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