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――もう三十分近く、こんなことをしている。それにしても……。
前を走る自分の通学用自転車を、つくづく見る。
もちろんそれは、夏休みの剣道部合宿を抜け出して、チリとサキ、ヒメさま方が待つコンビニへ向かうのに使ったものだ。
おかしなことはなにもない。でもだからこそ思うんだ。
自転車も一緒に時空の波に飲み込まれたはずなのに、時空世界を飛ぶのは、魂だけなんだなって。
「この道をずっと進むと、五百メートルくらいでヒカルの家だよな。
あと、どれくらいで、ダイチの家に着くんだ?」
となりを走るハルが聞いてくる。
ハルは、ぼくの家に何度も遊びに来ている。
「もうすぐさ。前に踏切があるだろ。
あれを渡って、先の交差点を右に曲がれば、ダイチの家だ」
「ダイチの家って、駅近なんだな」
ハルの言う通りだ。
目の前の線路の右方向すぐに、『南朱鷺丘駅』がある。
前を行くサキの自転車が踏切の手前まで来たとき、〟カンカンカンカン〟と警報が鳴り、警告灯が赤く点滅した。
〟キキーッ〟と、サキが強くブレーキをかけた音が聞こえた。
サドルから降りて停車したサキの前で、遮断機がゆっくりと下りていった。
チリとハル、そしてぼくが、止まっているサキに追いつく。
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