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第10話 ごま油の香り
「遅かったか!」
「ヒメさま方、神の力であの電車の中に、瞬間移動できないの?」
『それができれば、学校からここまで、お前たちを走らせまい』
ハルの問いに、サクヤヒメさまが素っ気なく答えた。
「そりゃ、そうだよな……」
電車は走り去り、警報も点滅灯も止まり、遮断機が上がった。
「歩こうぜ」
ハルが振り返って言った。
ぼくたちの後ろには、いつの間にか遮断機が上がるのを待っていた人たちいた。
チリとサキは自転車を押し、ぼくとハルは歩いて踏切を渡った。
少し歩き、ドラッグストアの駐車場に入って、ぼくたちは話し合った。
『イワナガ姉さまもニニギノケガレも、われらが二人を追うことは予測していたな』
「これからどうしよう? 多分、あと四十分くらいで″時の大波″が来るよ」
サキが、ポケットからスマホを取り出し、時間を確認した。
「あっ、スマホ! いいな」
「持っているでしょ」
ハルの声に、サキが言葉を返した。
ハルは、制服のポケットを両手でパタパタ叩き、内ポケットからスマホを取り出した。
「確かに……」
――イワナガヒメさまたちのこと、とても追えそうにないや。
だったら……。
「ねえ、みんな。おなか減ってないか?」
ぼくは、みんなに聞いてみた。
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