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「そりゃぁ、ハラペコさ。あんなに走ったからな」
と、ハル。
「じゃあ、駅前でラーメンを食べない?
安いけれど美味しいラーメン屋さんがあるんだ」
自宅に近い駅前は、ぼくのテリトリーだ。
幼い頃から家族で通っていたラーメン屋さんがある。
『ラーメンってなんですか?』
チルヒメさまの興味津々といった声が、聞こえてきた。
「食べてみますか?」
『ぜひ』
『チルヒメ、はしたない』
と、サクヤヒメさまが注意する声が聞こえた。
『でも、サクヤ姉さま。
昔から人たちが、神に供えてくれるのは米や鮮魚や昆布など、変わりません。
けれど、今を生きる人たちの食べ物は、違うものもあるようです。
わたくしたち神と人の距離が離れすぎないためにも、この時代の人たちの食べ物を知ることも大切だと思うのです』
『なるほど、それはそうかも』
ぼくたちは駅前の駐輪場に自転車を止めて、ラーメン屋さんに向かった。
白地に赤く〟来々軒〟と書かれたのれんの店。
のれんをくぐり、手動のガラス引き戸をガラガラと開ける。
「へい、らっしゃい」
と、調理場に立つ店主のおじさんから声がかかった。
「あったかい」
と、チリのホッとした声。
確かに、外の日没後の秋の空気は冷たかった。
ラーメン屋さんの店内の少し湿った暖かい空気は、心地よかった。
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