第10話 ごま油の香り

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ぼくとハルは並んでサキとチリと向かい合い、四人掛けのテーブル席に座った。 そして、自分たちの財布の中身を確かめた。 ぼくは八百円、ハルは七百円、チリとサキは、それぞれ二千円ずつ持っていた。 お店のおばさんが、テーブル席に水の入ったコップを四つ持ってきてくれた。 「ヒカルちゃん、かわいい女の子たちだね。あんたも、中学生だもんね」 冷やかすようなおばさんの声。 「おばさん、やめてよ」 家族経営のこのお店は住居と一体になっていて、おじさんとおばさんは、ぼくと同じ町内会だから、ぼくのことを幼い頃から知っている。 「注文が決まったら、声をかけてね」 おばさんは笑って、他のテーブルに向かった。 「ヒカル。このお店のおすすめは、なに?」 と、メニューを見ていたサキが聞いてきた。 「タンメンかな」 値段は五百円と安いけれど、美味しい上に野菜炒めがたっぷり載っている。 「じゃあ、あたしそれ」 「あたしも」 「オレは、それの大盛りで!」 「えっ大盛って、多分、想像している以上のボリュームだぞ」 「大丈夫だよ。メチャメチャ腹減ってるもん」 ぼくは、おばさんが布巾がけをしているカウンター席まで行って、タンメン四つ、内一つ大盛と注文して、テーブル席に戻った。
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