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さくらさんさろまで、あと二十メートルくらいで、神世通りからハルが現れ、ぼくに気付いて手を振った。
その後ろには、サキとチリ。
――よかった。間に合った。
ぼくは安心して自転車のブレーキをかけたが、〟ジャリリ〟という音と同時にハンドルがとられ、自転車のバランスが崩れた。
あわてて地面に、視線を落とした。
道路にはこの冬の雪対策で、自動車のスリップ防止用にまかれた砂が大量に残っていた。
その砂が生きているヘビのような形になって、のたうち流れ、自転車の車輪をあやつっている!
――どっ、どうして!? さくらさんさろの石塔に正面衝突しちゃうよ!
とっさに、自転車ごと自分から倒れた。
ぼくはうねる砂の流れに乗り、さくらさんさろのど真ん中に向かって、すべり込むように足から突っ込んでいった。
目の前で、横倒しに滑って行く自転車が低い路肩に乗り上げ、石塔に当たった。
――このまま突っ込んだら、大ケガになる!
一瞬の判断で、倒れている自転車のサドル部分を、滑り込んでいく両足の裏で蹴った。
衝撃は、ぼくの足から自転車に伝わり、そしてその先の小さな石塔を襲った。
ぼくは止まることができたけれど、石塔は〟ボコッ〟という音を立てて、ドミノのように倒れた。
「うわっ、神さま、ごめんなさい!」
ぼくは倒れたまま、思わず叫んだ。
ハルとサキ、そしてチリがかけ寄ってきた。
「おい、ケガはしなかったのか?」
ハルが心配そうに声をかけてくれた。
立ち上がってみると、ズボンは地面にこすれて傷だらけになった。
でも、体はそれほど痛くない。
かすり傷程度で済んだけれど、石塔を倒してしまった。
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