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第2話 三姉妹
「ぼくは平気だけど、神様の石、倒しちゃったよ。天罰が、当たっちゃうよ」
「大丈夫よ。その石は、後ろの祠を守る石敢當(いしがんどう)。神力はあるけど、神霊は宿っていないわ」
静かにそう言ったのは、チリだった。
「えっ、そうなの?」
ぼくは、チリの意外な知識に驚いた。
チリはハッとした表情になり、顏を赤らめた。
「チリは、神さまや妖精の研究をして、絵にも描いているのよ」
サキが、そう教えてくれた。
ぼくたち同級生にとって、華やかなサキに比べて、チリはとっても地味な存在だった。
休み時間も、サキ以外のクラスメイトとは、あまり話もせず読書にふけっていた。
ある意味、サキよりも近寄りがたかった。
「石は割れていない。立て直そうよ」
チリはそう言って、石敢當に手をかけた。
「そっ、そうだよね」
石敢當を倒したぼくが、一番に気付かなくちゃならないことだった。
急いでチリのとなりに立って、石敢當に手をかけた。
――あれ?
石敢當のてっぺんが、ほんの少しだけどポコリと欠けて、そのかけらが右手に残った。
「あー、やっぱり、少し壊しちゃった……」
「そのくらいのこと気にしないの。風雨にさらされて、ずっとここに立っているのよ。欠けたのは、ヒカル君がぶつかったせいじゃないわ」
チリは、ぼくをなぐさめるように、そう言ってくれた。
――チリって、やさしいんだ……。
ぼくは気を取り直し、かけらをズボンのポケットに入れて、もう一度、石敢當に手をかけた。
そのとき背後から〟ズズーゥンン〟と、大地を揺るがすような轟音が響いた。
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