第十三章 由梨の中に存在する健吾

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「健吾さん」 由梨はまたしても健吾の名前を口にした。 (由梨、まだ俺の記憶はあるんだな) 「健吾さん、どうされたんですか、大丈夫ですか」 一真は驚いた。 (昨日のことは、記憶から消えているのに、若頭の存在は残っているんだ) 由梨は一真に顔を向けて、一礼し、言葉を発した。 「はじめまして、あなたが健吾さんを助けてくださったんですか」 一真は固まった。 由梨はじっと見つめられて、戸惑った。 (なんでじっと見てるの、この人誰だろう) 「由梨、そいつは東條一真だ、俺を助けてくれた命の恩人だ」 「そうですか、ありがとうございました」 一真は我に返り、一礼した。 「しばらくこのマンションを使ってください、俺は女のところにいます、ほとぼりが冷めるまで目立った動きは控えてください」 「何から何まですまねえ、感謝する」 渡辺も一真に頭を下げた。 一真はマンションを後にした。
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