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健吾はさえを誘った。
「あのう、健吾さんに女性がたくさんいても、私、気にしませんから」
「自分には女はいません」
さえは驚きの表情を見せた。
「自分には諦められない女がいます、さえさんと結婚しても、愛することは出来ません、
ですから、さえさんから、この縁談、断ってください」
「その諦められない女性とは、今も関係が続いているのでしょうか」
「いいえ、五年前に姿を消して、まだ消息不明です」
「そうですか、いいですよ、健吾さんがその方を想っていても、ちゃんと私を抱いてくだされば、私は健吾さんと夫婦になりたいです」
健吾は戸惑いを見せた。
「愛のないセックスでよろしんでしょうか」
「構いません」
「しかし……」
「実は私にも愛する男性がいます、堅気の人です、その人とは将来歩んでいくことは出来ません、でも別れることも出来ません」
健吾は黙って聞いていた。
「母はやはり堅気の男性を好きになりました、そして駆け落ちしたんです、でもお爺さまに捕まってしまい、父は帰らぬ人になりました、でも母のお腹には既に私が宿っていました、母は私を生む決心をして、でも父の後を追って命を経ちました、私は彼にそんな想いをさせたくありません」
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