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ご主人とブルー
その日の夜。
いつものテレビボードにはいつもの置き物達。
「無理し過ぎるとどうなるか、よ〜く分かったろ?」
「あ、はい。シロ先輩、心配してくれてありがとうございます。さっきは本当に危なかったからつい。……ブルーちゃん、無理矢理押しのけてごめんね」
クロは奥様に連れ去られた後、強力瞬間接着剤で手首をくっ付けられて戻って来た。
「よく捨てられなかったな」
中熊の言葉には信じられないといった含みを持っているのが感じられる。
「福田家の人達は、モノを大事にしてくれるから。あの……僕、こんなふうに直してもらえて、また福ポイントがいっぱい貯まったよ」
クロの手首は割れたところが白く線になって見えるのが痛々しい。所々接着剤がはみ出して固まってしまったのはご愛嬌。
あまり感情を爆発はさせないが、直してもらえた喜びを噛み締めてクロは嬉しそうだ。
「次の福招きはまがいモンの番だが……なんだ、ずっと黙り込んで。クロの捨て身の福招きに怖気付いたか?」
「集中しているのよ。邪魔しないで」
「オイオイ。あんまり気合い入れすぎると、粉々に砕けちまうぜ?」
シロが勝利を確信しているかのように三日月みたいな目でニヤニヤしている。
クロは鈴3回。
シロも最初の見本も合わせて計3回。
私は3回かそれ以上鳴らさないと一人負けしてしまう。
一生“まがいモン”呼ばわりはゴメンだわ。
最近ご主人はなんだか元気がない。
ご主人に福を、幸せを、めいっぱい招けるように念を込めて、手招きした。
「ただいま」
いつもよりも遅い時間に、ご主人が帰って来た。
「ご主人様おかえりなさい」
いつものようにご主人の帰宅を皆んなで出迎える。
「おかえりなさいあなた。……あれ?何を持って帰って来たの?」
ご主人が、両手で箱を大事そうに抱えてリビングへ入って来た。
「幸はまだ起きてるかな?」
もうまもなく寝ようとしていた幸ちゃんが呼ばれて、眠そうにリビングへ来て箱の中を覗き込むと、一瞬で目が覚めたようだ。
「パパ!え?ホントに?」
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