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ご主人とブルー・2
「ウチで飼うの?」
ご主人は、ロシアンブルーの猫を連れて帰って来たのだった。
「実は先日、悪質なブリーダーによる多頭崩壊の現場に行ってね。人間の勝手であんな……いや……」
ご主人は眉間に皺を寄せ、それから幸ちゃんの顔を見て口を噤んだ。
「とにかく酷い有様だった。ブリーダーは逮捕したけれど、生き残っていた猫達をなんとかしなくちゃならない。地元の保護猫活動の人達が行き先を探してくれていたんだ。でもこの子はちょっと大きくてヤンチャだからか、最後まで引き取り手が無くてね」
「多頭崩壊の……そうだったの。だからあなた最近、ちょっと元気がなかったのね?」
ご主人が悲しそうに頷く。
「別れが辛いから、もう動物は飼わない。……と決めていたけれど……」
ご主人と奥様は、幸ちゃんの様子を見て微笑んだ。
「かわいい〜。私、こんなに可愛い子見たことない」
幸ちゃんは、まだ箱の中でキョトキョトしている猫を見つめて眉が下がりっぱなしだ。
「幸。ちゃんとお世話できるかな?」
「する!」
「毎日ごはんをあげたり、トイレの掃除をしたり、ブラッシングをしたり……」
「できる!」
「よし。じゃあ、この子の名前は幸が付けてくれるか?」
「うん!」
リンリンリンッ
「……3回」
「また3回鳴ったぞ?」
「クロと一緒……」
「……じゃあ、勝負は?」
「引き分け?」
「面白くねぇな。もう一回だ!」
「ね、ねえ、そ、そんなに鳴らして、ブルーちゃん大丈夫?」
さっきクロが一度に3回鳴らして手首が折れてしまったのを目の当たりにしていた置き物達が、ブルーの招き猫に注目してざわめく。
すごい……というよりも、皆心配の眼差しで。
「……ブルーちゃん?」
体にヒビは入っていないようだが、ブルーが返事をしない。
「なんだ?無理しすぎて気絶したか?」
置き物達がブルーを心配していると、幸ちゃんは猫の名前を決めたようだ。
「決めた!この子、とっても目が綺麗だから、アイにする」
「アイ。良い名前ね。愛情いっぱい注いであげましょうね」
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