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「見てー! 結婚記念日に、旦那に買ってもらっちゃった」
美由紀が嬉しそうにネックレスのチェーンを人差し指にかけ、トップのダイヤモンドを見せつけた。
ティファニーのものだ。
可愛らしくて上品。
無色透明の輝きにうっとりとため息をつく。
「綺麗だね」
隣の香織と共に口々に言うと、目の前の美由紀の頬は赤らんだ。
「私もね、今度の結婚記念日、台北に行くことになったの」
次は香織が嬉々とした声でそう言った。
「いいなー。海外旅行か」
「台北人気だもんね。ほら、映画の舞台になったところとか」
「そうそう! 行くつもり。あとランタン飛ばしたい」
「めっちゃロマンチックー!」
それからしばらく、香織の海外旅行の計画についての話で盛り上がる。
香織の頬が赤く染まる番だった。
高校の時からの、三人組の縁が続いている私達。
不思議とタイミングが同じ一年前、それぞれ28歳の時に結婚した。
まだ全員子供がいないので、比較的自由に行動でき、今でも二ヶ月に一度はこうしてカフェに集まっている。
「いいなー。二人とも。素敵な結婚記念日で」
結婚一周年記念。
今まで他人だった男女が家族になり、共に暮らして一年。
それはきっと、とても感慨深く尊い。
「志穂だってもうすぐじゃない。結婚記念日」
「たしか今月の、」
「そう。明後日。11月の23日」
11月23日。
そう言うと、よってたかって「何故前日の、いい夫婦の日にしなかったの?」と尋ねられる。
その度に私は苦笑して、「そういうの気にしてないから」と返す。
「楽しみだね。記念日」
美由紀の言葉に笑って首を振り、コーヒーをかき混ぜた。
「ううん。うちはそういうのないから。彼、記念日とかにホント疎くて」
夫の稔は、記念日に無頓着だ。
なんせ、自分の誕生日すら忘れるほどに。
「大丈夫だって」
「きっと良い記念日になるよ」
二人の笑顔に、曖昧に頷いてカップを口につける。
そして、次に振る話題を頭の中で思い浮かべていた。
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