20回目のクリスマスイブ

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20回目のクリスマスイブ

彩香は、今年も、朝から大きな 手作りケーキを作り始めた。 今年は、彼が逝ってから20年。 真っ白なクリスマスケーキに 真っ赤な大粒のいちごを乗せて、彼が大好きだった黄色い花びらを飾る。 ろうそくを20本さして火を付ける。 そして、ケーキの横には、パステルカラーの大きな花束を飾る。 横に、充夫の写真を添えて、ゆっくりと目を閉じて、手を合わせる。 あの日から何年が過ぎても、 やっぱり、今日も あなたに会いたい。 これが、彩香の毎年のクリスマスイブの儀式だ。 40歳で逝ってしまった彼への追悼の意を込めて。 充哉が起きてきた。 明日で20歳になる充哉は、 彩香が愛した充夫の生き形見だ。 彩香は、来年には還暦を迎える60歳少し手前だった。 充哉も、写真の前で目を閉じて、手を合わせる。 ケーキを取り分けて、充哉の前に置く。 充哉は、彩香が作る手作りケーキが大好きだ。 今朝も、朝から美味しそうに頬張っている。 彩香は、その顔をしげしげと見つめる。 「段々、パパに似てきたわ。 年と共に。」 彩香は、充哉の中に、亡くなった彼の幻影を見ていた。 やっぱり、今日も、 あなたに会いたい。 私の18歳の誕生日に、サプライズで、バースデーケーキを用意してくれた充夫を思い出していた。 友達の学と一緒に祝ってくれた、3人だけの誕生日を、彩香は今でも忘れない。 皆が笑顔でいたあの日を。 あの日、受け止められなかった、充夫の愛を悔いる。 私達は、あまりにも遠回りし過ぎてしまった。
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