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再生の日々
20年ぶりの再会は、当然、皆、歳を感じさせたが、何も言わなくても、顔を忘れてはいなかった。
マスターもママも元気そうで、
店の内装もほぼ昔のままだ。
「充夫君は、ずっと来てるけど、彼女はかなり長年会ってないよね。」
と、ママが言う。
「はい。ここに来てたのは、独身の頃だから、かれこれ、 20年位たちました。
あっ、もっとも、今は又独身に戻りましたけど。」
一瞬、皆あんぐりとした顔をしたが、一番に、充夫が口を開いた。
「ビックリだな。
実は、僕も独身に戻ったんだ。」
「わ~。これって、運命の再会じゃない。」
と、ママが言う。
「茶化さないで下さいよ。
私は、先週、離婚が成立したばかりで、まだまだ先が見えない状態なんです。」
「そうなんだ。
でも、僕もまだ別れて半年位だよ。」
「じゃあ、まだお互いに傷だらけだよね。」
どうした事か、偶然にも、離婚したばかりの2人が、思い出のよっくもっくで再会したのだ。
この時から、運命の歯車が再び回り始めた。
再会を祝って、乾杯して、2人は、20年の時を埋めるように、話し始めた。
彩香は、新しく仕事を探す為に、ハローワークに通いながら、帰りには、フラッと、よっくもっくに寄るようになっていた。
充夫とも何度か顔を合わせているうちに、気晴らしに、ドライブにでも行こうと言う話になった。
こうして、再会した2人は、又
昔のように急速に距離を縮めていった。
度々会うようになって3ヶ月位がたっていた。
互いの寂しさを埋めるべく、2人は一緒に過ごすようになっている。
それが、とても自然で、2人共、互いの心が穏やかに満たされていく感触を同時に感じていた。
秋の夕暮れの海辺で、互いに寄り添って、彩香が呟く。
「ずっと前からこうして傍にいれば良かった。
私は、20年も回り道して、今やっと充夫君に辿り着いた。」
「僕もだよ。
彩ちゃん、もし可能なら、僕と一緒にもう1度人生をやり直せないかな?」
「うん。やり直そう。
こんな私で良ければ、もう1度受け止めて下さい。」
彩香が、充夫の顔を見た瞬間に、充夫は、彩香を抱き締めて口づけた。
尚、いっそう強く抱き締めて、「今度こそ一生離さない。」
と、再び唇を合わせた。
さっきよりも強く激しく。
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