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人生のリセット
それからの2人は、まるで若い恋人同士のようにデートを重ねた。
彩香が行きたいと言う場所、食べたいと言う食事、
充夫は一つ一つを叶えてくれた。
秋の紅葉を楽しみ、
冬の寒さも忘れる位に、温かく優しく包みこんでくれる充夫。
思えば、勇輝は、充夫とは正反対で、浮き沈みが激しく、コントロールするのは難しかった。
機嫌のいい時はともかく、ひとたび怒ると、1週間も口をきかないなんて事はざらにあった。
そんな我が儘な勇輝にふりまわされる毎日に酷く疲れていた。
それでも、紗綾香を授かってからは、笑顔が増えて子煩悩な父親になってくれたと喜んだ。
でも、その優しさのほとんどは、
紗綾香だけに向けられていて、
彩香には厳しい夫だった。
何でこんな人と一緒になってしまったのだろう。
と心にはいつも冷たい風が吹き抜けていたが、紗綾香だけは可愛がってくれるから我慢するしかない。
つまり、彩香にとっては、正直、失敗の結婚だった。
だからこそ、尚更、歳を重ねた自分には充夫の優しさが染みる。
この人は、最初から私を受け入れようとしてくれてたのに、何で、私は勇輝しか見えなかったのだろう。
自分の愚かさが悲しい。悲し過ぎる。
回り道なんかしないで、ストレートに充夫と一緒になっていたら、しなくていい苦労なんてせずに毎日穏やかに生きてこれたのに。
でも、絡み合っていた赤い糸は、ようやく解れて真っ直ぐに繋がった。
ある時から、勇輝は全く抱いてもくれなかったから、彩香は心身共に枯れていくような感覚で生きてきた。
でも、今は、充夫が精一杯愛してくれる。
心の通ったセックスは最高だ。
彩香は、女としての喜びを噛みしめながら、充夫と共に絶頂を味わう事も知った。
こんなに優しく丁寧に愛された事なんかなかった。
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