君に会いたい

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君に会いたい

幼い頃から夢に現れ続けていたあの姫に、 俺は…… あの女性にずっと会いたかったのか? ずっと…… ずっと…… 会いたかったのか……? ピピピ ピピピ……。 朝を知らせるアラームの音。 昭が目覚め、時計を見ていきなり 起き上がると、   「やべぇ、遅刻だ」 慌てて身支度をして家を出て道を走り出す。 息を切らして走る先に見えたもの。 そう、満開の大きな桜の木……。   桜の木の下に立ち止まり、 息を整えながら見上げた昭。   昔から、桜を見ると切なくなる……。   その理由がはっきりとわかった昭。 「綺麗な桜……」  と後ろから声が聞こえた。  彼が、振り向くと桜の木を見上げたあの人がいた。   髪をかきあげる細い白い手首に見える  『桜の形をしたあざ』  遠い昔のおぼろげな記憶が蘇る。 「ええ、綺麗な桜ですね。  会いたかった。あなたに……」  俺が会いたかった人(女性)……。   「桜……子さん……」  俺はそう呟いた。    
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