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「美味しかったですね。お腹いっぱいだ」
店から出て来た昭が言った。
レストランで、食事をした後、店を後にした
四人。街頭に設置された時計からは、午後九時を知らせる鐘の音が聞こえる。
「九時か……どう? この後少しだけ
飲まないか?」
健二が昭と華を誘った。
「はい。喜んで。ね、昭」
と華が返事をした。
四人は、健二と桜子の行きつけのショットバーへ向かった。
カラン、カラン……。ドアを開ける音とともに店の中からはジャズの音色が聴こえて来た。
カウンター内にいた、マスターに健二は指で『四人』と告げると、カウンター席に昭と華、桜子を案内した。
バーテンがショットグラスに大きめの丸い氷を入れ、その上から、ウイスキーを注ぐ。
カラン、とグラスの中で氷が解ける音が、ジャズの音色と重なり、なんともいえない雰囲気を醸しだす。
「この雰囲気落ち着いてていいな。お二人の行きつけですか?」
昭が健二と桜子に尋ねた。
「うん。この店のマスターと健二さんが知り合いなのよ」
桜子の言葉を聞いた昭は、
「流石! 健二さんって至る所に知り合いがいるんですね」
「え~、まぁ~、君達より少しだけ長く生きてるからね」
「健二さんと桜子さんは、年の差はどのくらいなんですか?」
「僕達? えっと、俺は三十五歳だよ。そんで、桜子は二十七歳」
「へ~、やっぱり、健二さんは大人の魅力が凄いですもんね」
華が呟いた。それを聞いた健二が、
昭の顔を見ると、
「華ちゃ~ん、だめだよ。いくら僕が魅力的でも、彼の前だと昭君がヤキモチ焼いちゃうよ」
慌て顔の華が、昭の顔を見て、
「昭くん、違うんだよ。そういう意味じゃないからね」
と取り繕った。そんな、華の耳元で、
「わかってるよ。そんなこと……」と囁いた。
「はいはい、お熱い二人だな……」
呆れ顔の健二は、ショットグラスに入ったウイスキーを飲み干す。
ブブブ……。華のスマホに着信が入った。
「あっ、会社の先輩からだ。ちょっと
失礼します」
と言うと華はスマホを手に取り店の外に出て行った。
「僕は、トイレに……」
健二も椅子から立ち上がると、店の奥に歩いて行った。
カウンターに残された桜子と昭。
桜子が昭に話かけた……。
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