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「はい、はい、はい。申し訳ありません。
そういうことで、本日お休み致します。
よろしくお願い致します」
通話を終えた昭は溜息をつくと、
スマホをテーブルの上に置いた。
カフェに入った昭と桜子。
「会社、急に休んで大丈夫なの?」
テーブルの上に頬杖をついた桜子が昭に言った。
「あ、はい。まぁ、いいんですよ。
気にしないでください。ところで、桜子さんこそいいんですか?」
店員が運んできたコーヒーを口にする昭。
「私? 私は大丈夫。フリーのリポライターだから」
「桜子さんって、リポライターなんですね。
凄いな」
「そんなことないわよ。」
桜子は笑いながら黒髪をかきあげた。
桜子の左手首に見える『桜の形をしたあざ』。
昭は、そのあざを見ると、
「桜子さん、その手首のあざって……怪我?」
彼の言葉を聞いた桜子は手首を右手でさわりながら、
「これ? これは、怪我じゃないんだよね。
その、私の家系って、女の子が生まれると
たまに『こんなあざ』が出現することがあるんだ。まぁ、『遺伝』なんだろうね。」
「そうなんですか……」昭が呟いた。
「どうかした?」
「いや……、俺、子供の頃から同じ夢を繰り返し
見てたんですよね。その夢の中に出てくるのが、綺麗な着物を着たお姫様で、その人の手首にも……その、桜子さんと一緒の『桜の形をしたあざ』があったんですよね。これって、なんか意味があるんですかね? あっ! 突然こんな話気味悪いですよね?」
昭が俯いた。
「気味悪くなんかないよ。ただ、驚いてるのかな?」
「驚く? なんで桜子さんが驚くんですか?」
「君が子供の頃から見ていた夢に出てきていた
『お姫様』は、『桜姫(おうひめ)』多分、私のご先祖様だよ……」
「え? ええ~? よくわかんないんですけど」
驚く昭に桜子が冷静な表情で、
「私は、あなたの夢の中の姫、『桜姫』の
子孫、そして、昭君は、あなたのご先祖
『大木昭之助』の子孫ということ
なんじゃないのかな?」
「これって、今流行りの『時を超えた再会』っていうヤツですか?」
「う~ん。よくわかんないけど、そういうことじゃないの?」
「そうか~。再会できたんなら、俺はもう夢は見なくなるのか」
「ふふふ。多分ね。私、そろそろ行かないと行けないから」
そう言うと、伝票を手に取り椅子から立ち上がった。
「コーヒーご馳走様でした」
彼の言葉聞いた桜子は、ニコっと微笑むと店から出て行った。
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