華の乱

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華の乱

 その日の夕方、昭と華は待ち合わせをして 行きつけの居酒屋で食事をしていた。 「えっ? 昭くん、桜子さんに会ったの?」 「ああ、今朝、家の近所でバッタリね。 ほら、あの神社の鳥居の近くにある大きな桜の木の下でさ。 俺びっくりしたんだよ。 この前も偶然ばったり会ったばっかりだったし」 「この前も? 偶然? ばったり? 会った?」 「ああ、会ったんだよ。あっ、でも二人きり とかじゃないからな。孝弘もいたんだ」 「もしかして、この前会社休んだ日?」 「そう。孝弘から隣市の歴史資料博物館に いきなり連れて行かれてさ。そしたら、 桜子さんがいたんだよ。桜子さん、フリーの ルポライターなんだって。取材で来たって 言ってた」 「ふ~ん。そうだったんだ。それで 、昭くんたちは何で隣市なんかに行ったの?」 「あ~、俺が見る例の『夢の話』華が孝弘に言ったろ? 孝弘のヤツ個人的に興味があったみたいでさ、調べていったら、その歴史資料博物館に所蔵してある『日本刀』に辿り着いたそうなんだ」 「日本刀? 日本刀が昭くんと関係があるの?」 「それがさ、その日本刀の持ち主だったのが、俺の御先祖の『大木昭之助』という人だったんだ。驚きだろ?」 少し驚いた表情を見せた華だったが、昭の顔を見ると、 「その日本刀と、昭くんの『夢』とは関係があったの? 『夢』じゃなくてあなた自身の 『前世の記憶』だったんじゃないの?」 「え? それは……」口ごもる昭。 「いいよ。話したくないなら……。聞かない」 「ごめん。その件については俺もまだよく整理がついてなくて……。 あっ! そうだ。桜子さんが今度、健二さんも入れて 四人で会おうって。いいだろ?」 「う……ん。四人でならいいよ」 「四人なら?」 「昭くん……。桜子さんと二人きりで 会わないで」 俯いた華が言った。 「え? 華どうしたの? いきなり……」 「昭くん、桜子さんと会わないで……」 「華、桜子さんのこと嫌いなの?」 「ちがうよ。桜子さんのことは嫌いじゃないよ。 その逆で、綺麗で、大人で素敵な女性と思ってるよ」 「じゃあ、なんで……?」 「昭くん、鈍感すぎ! もういいよ!」 「へ? 俺が鈍感? なんでよ?」 「わかんない? 普通、自分の彼が大人で、 綺麗な年上の女性と二人で会ってることに冷静でいる人いるのかな?  私は自分に自信がないから……その無理なんだよ」  突然、泣き出す華に驚く昭。周りを見ると、 居酒屋中の人が昭を見ていた。 「華、ごめん。ごめんって。わかったから 泣くなよ。俺、大丈夫だから安心していいよ。俺は華だけだから」 そう言うと、昭は華の頭を優しく撫でた。
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