夢?それとも……

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夢?それとも……

 華と別れ、帰宅した昭、上着を脱ぎ、ベッドに座ると小さな溜息をついた。  「華のヤツ、どうしたんだろ? 急に興奮して……俺が、桜子さんに会ったのがよっぽどイヤだったのかな?あんな風に『言葉』にして言われたから、正直俺驚いちゃった。でも、ヤキモチ焼く華、可愛かったな……」  と呟くと昭はベッドにコロンと横になり目を閉じた。 寝息を立てる昭……。 彼は、意識の奥深いところから聞こえてくる声に耳を傾ける……。 「姫、姫、危のうございます。まったくあなた様は元気が良すぎまする。侍女たちも困り果てておるではないですか」 「そうか? 危ないのか? わかった」 「一国の姫君が、このような男児のようなふるまいでは、殿もお困りになりますな……さぁ、早う桜の木からお降りください」 「わかった。まっこと昭之助は『じい』 のように小言がうるさいのう……」 「姫、『じい殿』ではなくとも、小言を言いますぞ」 「ふん。そうか……。なぁ、昭之助」 「何でございますか?」 「えいっ!」 「えっ? 姫、桜の木から飛び降りるとは 危のう……。うぁっ!」 「キャ~、姫様……」 ドサドサ……。 「痛っ……」 「昭之助? 昭之助大事ないか?」 「は・はい。大事はございませんが……まさか木から飛び降りるとは……。まっこと桜姫は……怪我でもしたら私は殿に顔向けできませぬ。それと、早く私の身体から離れてください。」 「あ……、すまぬ」  私の身体の上に覆いかぶさっていたあなたは、少しだけ顔を赤らめると、 身体を起こして立ち上がった。 「見よ、昭之助……。綺麗じゃな」 姫が桜の木から飛び降りた振動で 桜の花びらが一斉に舞い散り、 姫と私の周りは薄桃色の桜の花びらで一面が覆われていたんだ……。 はっ!として目を覚ました昭は起き上がると、 「今のは……夢? いや、ちがう…… これは、俺の、記憶……なのか? 孝弘が言ていた前世の……」と呟いた。
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