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二人の想いは永遠に
「今年の桜は、ことのほか見事だな」
車のドアを閉めながら、昭が呟いた。
「そうだね。あっ!
勝手に行っちゃ危ないよ」
そう言うと華は慌てて、男の子を
追いかける。
昭はその光景を見ながら、微笑んだ。
すると、昭の車の隣に一台の車が停まった。
車からは、桜子と健二とそして、可愛い
ぬいぐるみを抱えた女の子が降りてきた。
「昭君、久しぶりだね。元気だった?」
健二が昭に声をかける。
「はい。元気です。健二さんたちも
お変わりないですか?」
「ああ、この通り、みんな元気だよ」
隣に立つ桜子と女の子の方を見る健二。
ここは、桜子の地元……。
桜子の父、栄介からの突然の便りには、
地元で行われる『桜祭り』への案内状が
添えられていた。
「何年ぶりだろう? この土地にくるの」
昭が言った。
「七年ぶり?」
桜子が答える。
「七年か……、もうそうなに経ったのか」
昭が呟くと、隣を歩く華が口を尖らせ、
「ちょっと~、それって私たちが
年をとったってこと?」
「ちがうよ。懐かしいなって思ってさ」
「あ! じいじ~」
女の子が満面の笑みで駆け出した。
目を細めながら、女の子を見つめる栄介。
女の子を抱きかかえると、みんなのもとに
歩み寄ってきた。
「やぁ、君たち、よく来たね」
優しい笑みを浮かべた栄介がみんなを
案内する。
「わぁ~、凄い桜だね。お父さん」
昭の息子が、昭を見上げるとそう呟いた。
青空の下、辺り一面を覆った満開の
桜の木……
彼等の到着を待っていたかのように
咲き誇る桜。
「さぁ、座って。家内が待ち
くたびれてるよ」
そう言うと栄介は、ビニールシートを
指さした。
「乾杯! 楽しい桜見の宴が始まった」
豪華なご馳走と美味しい地酒……に
みんなが楽しそうに笑っていた。
何かに気がついた昭が桜子に話しかけた。
「桜子さん……手首のあざが……」
桜子が手首のあざを見ながら、
昭に話はじめた。
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