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公園のベンチで昼休憩をとる昭と孝弘。
「それってマジか?」
驚く孝弘に昭が答える。
「ああ、本当だ。」
「えっ! それじゃあ、その桜子さんって
いうルポライターの女性のご祖先の『なんとか姫』がお前が子供のころから見続けてきた『夢』の中の姫君だったってことか?」
「なんとか姫じゃなくて『桜姫(おうひめ)』な。で、孝弘、おまえが調べてくれた例の歴史資料博物館に飾ってあった『日本刀』が
俺の祖先の『大木昭之助』のものだったってことだ。」
「そうか……。ん? 昭、でも何でその桜子さんが桜姫の子孫とわかったんだ?」
「それは、俺の夢に出てきてた桜姫の手首に
『桜の形をしたあざ』があって、おなじ形の
あざが彼女にもあったから、聞いてみたら……うん、ビンゴだった」
「え~何、なに、何~。超怖いんですけど。」
孝弘は胸の前で両腕を交差させると身震いをした。
「おまえさ~、超怖いって失礼だな。」
「だってさ、何百年前の人物がさ、なんの前触れもなく現れ続けるって……。あっ!」
「あっ! ってなんだよ。孝弘? おまえの方が気持ち悪いぞ。
その言い方。何だよ……はっきり言えよ」
「昭、おまえ、もしかして、『大木昭之助』の
生まれ変わりなんじゃないのか?
だから、前世の記憶があるんだよ。そして、桜子さんも 『桜姫』の生まれ変わりなんじゃないのか? 考えてみ? すべてが辻褄が合うじゃないか。きっとそうだよ。」
孝弘は、目をキラキラさせると、両手で昭の肩を握った。
ブブブブブ……。
昭のスマホから着信の振動が伝わってきた。
スーツのジャケットのポケットからスマホを取り出し、画面を見た昭。
画面には『華』の文字が映しだされる。
「もしもし……華? どうした?」
と話す昭。
「昭くん? 今大丈夫?」
「うん、昼休憩中だけど」
「休憩中にごめんね。この前言ってた桜子さんと健二さんと四人の食事会。今週末なんかどうかな?」
「今週末?」
少し戸惑う昭に華が尋ねる。
「昭くん? だめ?」
「いいけど。どうしたの? 急に……この前はあんなに嫌がってたのに」
「その、この前は私も大人気なかったなって
反省したの。それに、桜子さんには健二さんという男性がいるものね」
華の言葉に少し慌てた口調になった昭は、
「そうだよ。華。その通りだよ」
「じゃあ、昭くん、桜子さんに連絡しておいてね」
そう言うと華は通話を切った。
「はぁ~」
溜息をつく昭に孝弘が聞いた。
「華ちゃん、なんて?」
「今週末、桜子さんとその彼と華の四人で
食事しようって」
「あらら~。そういう展開になったのか」
「おまえ、なんか楽しんでない?」
「そんなことないさ。まぁ、色んなこと
踏まえて桜子さんと話してみたら?」
孝弘がニヤリと笑った。
「う……ん。わかったよ」
昭は苦笑いをした。
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