Stork

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 ガルディが煙草を大きく吸いこみ、間髪入れずに酷く咳き込む。胃の中身をひっくり返したみたいな咳をして、雪に赤い斑点が広がった。  ガルディが足下に視線を向ける。そして溜息混じりに悪態づいて、再び煙草を吸い始める。  ぼくは残った乳を片付けながら、人々が谷底にバスケットを投げ捨てるのを眺める。  一つ、二つとバスケットが、肩を落とした人々に投げ捨てられていく。それを眺めるのも次第に嫌になってきて、ぼくは額を抑えて足下の雪を見つめた。    ぼくだって『コウノトリ』に運ばれてきた。ガルディだってそうだ。今、投げ捨てられている彼らと何も違わない。  彼らとぼくらで、何が違ったのか。いや、きっと何も違わない。ただ、『コウノトリ』に運ばれてくるタイミングが違っただけだ。 「いつまで続けなきゃいけないんだろう」  うつむいた口からそんな言葉がこぼれて雪に落ちる。 「終末(おわる)までだ」  紫煙とともに、溜息混じりの答えをガルディは返した。 「これが人類(おれたち)の選んだ終末(おわり)だからな」  見上げたガルディの表情に力は無かった。半開きの口から、肺に残っていたであろう僅かな紫煙が漏れ出ていた。 「……そうだね」  そう返して、僕は激しく咳き込んだ。  血の飛沫が雪を汚す。口に広がる鉄の味を、ぼくは最後の乳で飲み下した。 終
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