24人が本棚に入れています
本棚に追加
勝利を勝ち取ったおろしポン酢は、私のご機嫌と共にカゴに入った。
「いつものポン酢より、量も少ないのに百円も高いじゃん」
「夜に大根を買いにいっておろす工程に、百円払っても私は惜しくない」
「……」
潔く負けを認めろ。もうすでに勝負はついてるんだ。
お目当てのおろしポン酢を手に入れた私は胸が弾む。大根おろしとポン酢の風味が口の中で思い出されて、思わず唾を飲んだ。
「あ、こっちの方が安い」
と、一度敗北した旦那は別の商品へと誘導するが、私はそんなことでは屈しない。このメーカーの、このおろしポン酢が好きなんだ。
「だから、それはおろしの醤油タレであって、おろしポン酢ではないのよ。却下」
しゅんと小さくなって、渋々旦那がおろしの醤油タレを元に戻すのを見て先へ進む。あ、豆腐も買わなくちゃ。
豆腐売り場へと向かう。いつものスーパーじゃないから、いつも買ってる豆腐がない。私は値段を見て一番安かった豆腐を選んだ。
「こっちの豆腐の方がおいしそうじゃない?」
と、旦那はまた口を挟んで、隣に陳列された高級豆腐を指差した。
「豆腐は絶対国産大豆の方がおいしいって!」
「絶対あんたの舌じゃ分からないよ」
最初のコメントを投稿しよう!