第四章 SOSの調べ

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「三年の高坂先輩が、倫太郎の所持品が八雲塾にあるという情報をイチカから入手すると、石島先輩を使ってその回収に走った。ただ、おそらくそこでは目的のものを全て発見できなかった。おまけにイチカや僕にしっぽをつかまれそうになってしまい、居心地はかなり悪かったはず。そこであなたは、僕たちの前でわざと石島先輩をボコボコにして盗品を引っ張り出すという演技をした。あれは全部演技だった。二人は敵対関係にあると思わせ、かつ僕たちが抱えている疑惑を全て石島先輩の窃盗のみに向かわせる狙いがあった。実際、容疑者が一度出し渋ったものを手に入れたことで、僕たちは真相にたどり着いた気になった。僕たちは、これで事件の謎に説明がついたと錯覚した」  おそらく石島をファミレスに呼び出したとき、その情報は千尋にも流れていた。千尋は事前に石島と打ち合わせ、石島が事前に選んだテーブル席の隣の席でずっと待機していたのだろう。そして、タイミングを見計らってあたかも一華の味方であるように出てきて、石島を撃退する演技をした。 「次にあなたたちは、証拠は倫太郎の自宅に保管されていると推測し、直接家に上がり込んで探し出すことを企んだ。イチカと距離の近いあなたが隙を見て家に上がり込み、そして高坂先輩がイチカを適当な理由で呼び出している間に証拠を探したんだ。レンくんが教えてくれたよ。倫太郎兄ちゃんの部屋で何かを探し始めて、全然問題を解いてくれなかったって」  蓮のクセの強さは想定外だったに違いない。不貞腐れてどこかへ行ってしまったときはかなり焦っただろう。なぜ勝手に外へ出て行ったのか問い質したときに、告げ口されたら状況は厳しくなる。だが自作問題を解いてくれるか否かということが最大の関心事項である蓮にとっては、倫太郎の部屋で何を探していようがどうでもよかったらしく、千尋の不審な行動が暴露されることはなかった。 「例の問題用紙をイチカが見つけてしまったことを知ると、口封じをするためにイチカを拉致した。試験問題のデータが流出していることが教師側に知れたら、状況は不利になるだろうからね。イチカは口を塞がれてしまったものの抵抗を試み、隙を見て僕に連絡を取り、SOSを発信した。聞こえてきたのは、ドとレの音。0と1が表現できれば、音は何でも良かった」  手にしていたノートを千尋に見せる。 「イチカはドとレからなる五つの音のパターンをループして発信していた。解くべき問題はこうだ」  ドドドレド レレドレド ドドドドド ドレドレレ ドレドドド 「これは横書きで読み、間が空いているところで改行するんです」  ノートのスペースに改めてこう書き直す。  ド ド ド レ ド  レ レ ド レ ド  ド ド ド ド ド  ド レ ド レ レ  ド レ ド ド ド
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