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デスゲーム裁判
一・俺は令和5年、ある島で行われたデスゲームで唯一生き残ったとして猟奇殺人で逮捕、起訴されると裁判で「第一級殺人罪」で有罪となったが判決に納得がいかず裁判のやり直しを国に要求した。
「デスゲーム中の殺人、三十四件については緊急避難と正当防衛が適応されます」
国選弁護人の真壁さんは冒頭陳述でそう述べた。
『緊急避難』は自分か他者の生存権利を守る為に止む終えず行った行動『正当防衛』は急迫不正の状態に対して自分または他者の生存権を守る為に防衛手段をとる行動だ。つまりクラスメイトが凶気を持って襲いかかって来た時にこちらも武器で抵抗して殺してしまう今回のデスゲームの死亡フラグは、本当に急迫不正の事だという事を立証する必要がある。
「正当防衛? デスゲームでは生徒全員に武器が支給されていたとあります。誰が襲って来るかわかっていては急迫不正に該当しません」
国は俺を有罪にしたい、死刑にしたい。弁護人は俺を無罪にしたい、最悪でも減刑にしたい舌戦が始まる。
「寧ろ何時、どこで、誰が被告に襲いかかって来ても不思議ではないからこそ、被告には予測が不可能ではないでしょうか。急迫不正には充分当てはまります。従ってデスゲーム内の殺人は正当防衛が認められます」
「生徒全員に正当防衛の機会は与えられていたなら、犠牲者となった生徒たちも被告に対して正当防衛を行ったとも捉えられる」
「それでも被告にはクラスメイトを殺す事は出来ません。裁判長はデスゲームで支給された武器についてはご存じでしょうか」
「確か、拳銃や日本刀、ナイフなどでしたね」
「関口被告はその中で日本刀を獲得しました。日本刀にも被告の指紋は付いていたし刀身には被告以外の血痕も付着していますが、被告は日本刀を一回も振るっていません」
「それだけ証拠があるのに何故、日本刀で殺害していないと言える?」
「被告は『日本刀の使いかたを知らなかった』んです。使いかたの知らない道具を使って自分の身を守る事はおろか、他人に致命傷を与える事も不可能といえます。刀や銃で攻撃して致命傷を与えるには刀剣や拳銃に関する知識や技術、それから訓練が必要であり、被告はどの訓練過程も経ていません」
「では関口被告に問います。あなたはデスゲームで支給された日本刀の使い方を知ってますか?」
改めて裁判長が俺に訊ねて来た。
「いいえ、俺にはそういうことわかりません」
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