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十
誰かに呼ばれた声がして、俺は目を醒ました。目の前には妹尾の顔がある。どうやら羽山と相打ちとなったが、辛うじて一命を取り留めたようだ。
「よかった、意識が、戻った。死んだかと思っけど、ずっと声をかけていたんだよ」
「妹尾、ごめん」
「でも、関口くんにまた会えてよかった」
「羽山は?」
「もういないよ、デスゲームは関口くんの勝ちだね。本当に本当に、誰一人殺さずに勝ち抜いたんだから凄いよっ!」
喜びを隠しきれないのか妹尾は泣きながら俺に抱きついて来た。
「ありがとう、でも妹尾も生きてるから二人だな。デスゲームの生存者」
自分で言って違和感を覚えた、デスゲームの生存者は俺一人で裁判では第一級殺人罪を受けた。それが納得いかないからやり直しを申請したが、デスゲームの生存者は二人になっているのだ。裁判の内容と大きく食い違っている。だとしたらあの裁判は何だったのか、緊急避難と正当防衛でデスゲームを最後まで、逃げ切って来たがそれで誰か犠牲になる度に良心の仮借のような事が意識の中で起きていたのかも知れない。
その中で現れた裁判長は俺自身の自責の念と、弁護人は、それは不可抗力だったと自己弁護する気持ち、どんな理由であれクラスメイトを助けず見殺しにしたと自分を責めたが、自分の命を守る為に止む終えなかったという気持ちが最後に勝ったという訳か。それでデスゲームでは俺も殺せれると絶望していたが生き延びる事を選んだから有罪で死刑が無罪になった。
「飛び降りた時点で、死亡したと認識されたみたいだけど、デスゲーム運営も神じゃないから全て管理出来る訳じゃないのかもね」
「思い込みだよ。デスゲームは全員が殺し合うという固定観念があるんだろうが、中にはそうしない奴もいれば、殺したくない人間もいる」
「関口くんみたいな人なかなかいないと思うけど」
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