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六「二人きりだね」
「ああ、友崎には悪い事をしたな」
「そんな事ないよ、仕方なかった」
「お前だけでも、生き残ってくれ」
「あたしは充分だよ」
妹尾は、そう言うと崖の方に歩き始めた。
「充分って」
「最後まで守ってくれたんだもの」
「でもまだ最後じゃないよ」
「あたしはもういいんだ。これがデスゲームじゃあなかったら、あたしたち普通に付き合えてたのかな。恋人としてさ」
「妹尾…」
「ごめんなさい、不謹慎だよねこういう会話」
「いや、そうじゃない」
「嬉しかった。ずっと一緒にいてくれて。関口くんみたいな人が生き残るべきだよ、こういうの」
「違う、俺たち二人で生き残るんだ!」
「関口くんは、最後まで生き残ってね」
妹尾は最後にそう言い残して、島の崖から飛び降りた。喩え、俺と二人きりになっても殺し合う事だけは死んでもしたくなかったようで、自ら死を選ぶ事でそれを回避したいというのが妹尾の意志だった。
学校では目立たない俺でも、デスゲームでは誰一人殺さなかった姿勢が人として尊敬出来るし、こんな状況でも一緒にいてくれるのが好きだと。妹尾の最初で最後の俺に対する告白。
「妹尾、早まるなっ! 二人で最後まで生き残るんだ。生きていればどうにかなる筈だ」
それしか言葉が出なかった。この言葉も信憑性はない。羽山みたいな嬉嬉として殺しをやるような輩が彷徨いている状況で、どう希望を持てというのか自分でもわからない。結局、俺は妹尾の自殺を止める事は出来なかった。自殺の幇助だ、俺が妹尾を自殺に追い込んでしまったんだ。
友崎との約束も守れず、女子一人も守れない。こんな人間がデスゲームで生き残るなんておかしすぎるとさえ思う、それでも、羽山のようなサイコパスを島から出す訳にはいかない。あいつと戦えるのは、俺一人しかいない。そう思い、崖の上で立ち上がった。
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