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九「あたしはじさ為に飛び降りましたが海が満潮だった為に、一命を取り留め、潮の流れで岸まで流されたんです。関口さんと羽山さんは発見した時には二人とも倒れていました、でも二人ともまだ息があった」
初めて知った。この時点では羽山との決着はまだついてはいなかったのか。それにしても、妹尾が死なずに生きていてくれて、本当によかった。
「二名の傷の手当をして、あたしは必死に声をかけたんです。死なないでっ!って」
「それで被告と羽山氏はどうなったんですか?」
「先に意識を戻したのは羽山氏のほうでした。日本刀で柄ごと殴打されてフラフラの状態ですが戦闘能力の低い関口さんにやられたのがショックだったのか『こんな弱い奴にボコボコにされて負けるくらいなら、死んだほうがましだ』と関口さんの日本刀を抜いて自ら命を」
「羽山氏は結局、自殺したんですね。死因が自殺なら、被告は本当に誰も殺害していないという証明になります裁判長」
「そうですね。それで被告はどうなったのでしょうか」
「関口さんはなかなか意識が戻りませんでしたが、あたしは声が枯れるまで叫び続けました。『関口くんお願い、目を醒まして、死なないでっ!』と何度も何度も」
「ではその時の様子をここで再現してもらって良いですか?」
「はい」妹尾は証言台から前に出た。
『お願いっ! 関口くん戻ってきて!』
『生きるのよっ! 死んじゃだめっ!』
『あたしは生きてもう一度、あなたに会いたい!』
『あなたに会いたいのっ! だから息を吹き替えしてっ!』
『あたしは、あたしは、あなたのことが、関口くんが、好きだからっ!』
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