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1 治癒魔法だけが使えない!?
sideシェリエ
私の名はシェリエ=ライザリア。
名誉あるライザリア侯爵家の次期当主。
類稀な美貌、頭脳、そして、魔力を有した私はまさにライザリア家の次期当主として相応しいと評されていた。
その日は代々伝えられてきた治癒魔法を学ぶ日だった。
なんと言う事は無い。
大きな魔力を有している私にかかれば、治癒魔法など…
そう思っていた。
ラットに傷をつけて、まずはそれを癒やす。
簡単な魔法だ。
しかし…
あれ…?
私には治癒魔法が…使えない…!?
そ、そ、そんなバカな!?
私にできない事などあるはずがないわ。
いいえ、ライザリア家の家督を継ぐならば、そうでなくてはならなかった。
他の火魔法が使えなくても、治癒魔法は使えないと話にならない。
それも、よく分かっていた。
最初こそ、丁寧に教えてくれていた神官の顔色が段々と変わっていく。
「どうだね?
アルティス。
私の娘はもう治癒魔法を覚えてしまっただろう?
何でも出来る子だからね。」
父が笑顔でやってきて言った。
「ライザリア侯爵、恐れながら、お嬢様には治癒魔法の力は無いようでございます…」
「で、出来ますわ!
ほら!」
私は魔力を込める。
ラットは千切れて死んでしまった。
それから、地獄の日々が始まった。
夜会にも、晩餐会にも、舞踏会にも行けずに、部屋に軟禁された。
恥晒しだと罵られ、蔑まれた。
父母はもちろん、妹も私に冷たく当たった。
「やぁねぇ、お姉さまと私のドレスを一緒に洗わないでちょうだい!
治癒魔法が使えなくなったらどうするの!」
そして、一年後、妹のサラナには治癒魔法の才能がある事が発覚した。
私は正式に次期当主から外されたのだ。
それから、3日も経たずに父から呼び出され、縁談の話を受けた。
お相手はロロドロア=セクティス様。
爵位も持たず、領地も持たない、騎士階級の方だった。
あんまりだわ…
いくら私が治癒魔法が使えないからと言って…
私は絶望に暮れた。
しかし、縁談を断れば軟禁が続くだろう。
私にはその縁談を受ける道しか無かったのだ。
こうして、縁談はとんとん拍子に進み、私は僅かな荷物を持ってライザリアの屋敷から放り出された。
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