2 寝耳に水の縁談

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2 寝耳に水の縁談

sideロロドロア 「縁談…?」 それは俺にとって寝耳に水だった。 生涯を独身で通そう!とか、そんな事を心に誓っていた訳では無いが、思いもよらない斡旋だった。 それを勧めてきたのは、唯一の上司である、魔導士団団長のゼンスさんだった。 「そうだ、縁談だ。 そろそろ、お前さんも27歳で良い年だろう。 それにな、副団長がいつまでも所体を持たず、独身というのも不味いんだよ。 なに、お相手を聞けばその気難しい顔も変わるさ。」 ゼンスさんは言う。 「俺は女が苦手です。 いや、もちろん、性的嗜好は女性ですが… 彼女たちは、自分が1番でないと気が済まず、相手を独占したがる…強欲な人間です。」 俺はとりあえず言ってみた。 「お相手はな、シェリエ=ライザリア嬢だぞ? それでも、そんな事を言うのか?」 「シェリエ嬢が…?」 シェリエ… その名前を聞いて男ならば、彼女を忘れることはまず無いだろう。 完璧な美貌に、頭脳明晰、強い魔力を有した彼女はまさに、貴族界、いや、この国の宝だと言っても過言ではなかった。 だが、なぜ、シェリエ嬢が俺などに…? 彼女は…そう、ライザリア家の次期当主なはずだ… 「まぁ、聞け。 シェリエ嬢はライザリア家の次期当主として非の打ち所がないと思われていた。 だが、しかし、彼女にはライザリアのお家芸の治癒魔法が使えなかったんだ。 それで… まぁ、その、夜会などのパーティーにも出席出来ず、屋敷に閉じ込められているらしい。 あんまりだとは思わないか? そう思っていた矢先に、向こうからお前に縁談の話が来たんだよ。」 ゼンスさんは言う。 「俺などでいいのですか? 腐っても侯爵令嬢でしょう?」 「だからさ。 農民などにはさすがに嫁には出せないし、名のある侯爵家などに出せば、復讐などと言い出されてもかなわない、そんな所だろう。 だから、騎士階級のお前さん辺りがちょうど良いと言う訳さ。 副団長で、領地もなく、爵位もない。 まぁ、見くびられたものだな。 実のところは団長の俺をも遥かに凌ぐ力を持っているというのに…」 「そう言う話は置いておいて… 俺は… まだ、結婚する気などは…」 「形だけでもいいから結婚しておけ。 それに、お相手はシェリエ嬢だぞ?」 俺は短くため息を吐き、承諾の返事の代わりとした。 まぁ、形だけというならば、しても良いか。 愛するつもりは無いが、それは向こうも同じだろう。 これは、政略結婚だ…
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