5 もう貴族じゃないけど

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5 もう貴族じゃないけど

sideシェリエ 着いた屋敷はそれなりの綺麗さだった。 だが、もちろんライザリア侯爵家の城と比べれば倉庫のような物だ。 この小さな屋敷では、おそらく晩餐会も夜会も舞踏会も開けないだろう。 そう、もう私は貴族では無いのだ。(騎士階級は貴族では無く、準貴族と呼ばれる独特の階級である) シェリエ=ライザリアではなく、今日からシェリエ=セクティスなのだから。 ロロドロア様は、優雅な仕草で私の腰を持ち上げ、馬車からふわりと降ろした。 「持ち上げて頂かなくても降りられますわ…」 つい刺々しく言ってしまう。 「それは失礼。 水たまりが足元にあったものだから、つい。 今度から泥だらけでも無視するから、安心してくれ。」 ロロドロア様は嫌味で返した。 「そ、そ、それは…知らなかったものだから… あの、その、ありが…とう…」 私は顔を赤らめて言う。 「…どう致しまして。」 私はロロド様に続いて屋敷に入った。 「使用人の数は何人ほどですの? お部屋の数と、料理人は… 家の事は私が滞りなく管理しますわ。」 「それはありがたい。 では、早速夕飯を作っていただいても?」 ロロド様は言う。 「それ、何かの冗談ですの…? 料理は貴族のする事では…」 「ふん… やはり、元貴族のお嬢様に料理は無理か。 使用人は居ない。 料理人も居ない。 部屋は8つ。 管理することなど何もない。 強いて言うなら、料理、洗濯、掃除をしてくれれば助かるがな。」 私は開いた口が塞がらなかった。 「あなた一応騎士階級でしょう!? 私に下女の仕事をしろというの!?」 「ぎゃあぎゃあわめかないでくれ。 出来ないなら、俺がする。 でも、騎士の妻はそう言うものだ。 俺たちは、いや、あんたはもう貴族じゃないんだ。 それだけ言っておく。 部屋は2階の4部屋から好きなところを選べ。 どいてくれ、料理の邪魔だ。」 ロロド様はエプロンをつけてキッチンに入ってしまわれた。 うそ…でしょう…? 私は貧血のように軽く眩暈がした。
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