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◇ ◇ ◇
「なに、それ…」
佐田が肩を震わせて笑う。
コロンと佐田の方に転がると、よしよしと頭を撫でてくれる。
「困った?」
「困りました」
「だね」
ご苦労様と言いながら、まだ笑ってる。
「見たかったな」
「ひたすらに恥ずかしかったですよ」
「えー、なんで?」
佐田が興味あるとばかりに、私の方に身体を寄せてきた。
「見られてたこととか、筒抜けだったこととか」
「あー」
「ままごとって、こちらの内情が他人にバレちゃうんだなって今更ながら気づいたり」
「まぁ、うん、それはそうかもね」
「さくちゃんにとっての夫婦が、そういうものだと思ってるなら…」
「それもそれでね」
「はい」
「問題だね」
「ですよね」
佐田はじっと私の顔を見つめてから、枕に突っ伏した。
真正面も、横顔も全てが絵になる国宝級イケメン。その口元に薄っすら笑みが浮かぶ。
「佐田さん?」
「ごめん、悩んでるのに。でもちょっと嬉しいなって」
「嬉しい?」
「撮影で長期間離れる時とか、俺ももちろん寂しいんだよ。でも一緒なんだな、と思うと嬉しいなって」
ほらね、またこうやってこちらの内情がバレちゃったり…
「最近は嫁とか奥さんとか呼ばれるの嫌な人がいるって聞くけど、果子さんは嫌?」
「考えたことなかったです」
「うちの、とかいつか使ってみたいんだけど?」
「嫌とか以前に、佐田さんが使うのはダメな気がします」
「えー、なんで?」
普通に考えてダメでしょ。どう考えても。国民的人気俳優が。
「嬉しいですけど、ね?」
「うん」
「ん?私のことですよね?」
「他に誰がいんの?」
ちょっと!と、叱られた。
「はーい」
「でもさ、自慢したいけど俺だけの果子さんだから、奥の方に隠して見せたくないって気持ちもあるんだよね」
「………」
佐田をじっと見つめると居心地悪そうに咳払いをする。
「奥さんだけに、ね。おあとがよろしいようで」
「落とされると逆に恥ずかしい!」
佐田が笑って、それを見て私が笑って。
深夜だったと気づいて二人でシーと唇の前に人差し指を立てる。
「なんでも型にはめればいいってわけじゃないしね」
二人一緒に眠る。
なんてことない、明日へと繋がる夜。
《完》
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