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ままごと
「お皿、洗ってくれたんですね」
テレビを見ている彼の背中に「ありがとう」と声をかけると、振り返った彼は「ついでだよ」と微笑む。
「今、コーヒー淹れますね」
マグカップにドリップ式のコーヒーをセットして、何回かに分けて湯を注ぐと、
「良い香り」
と、彼が近づいて来た。
「今日は何時に出ます?」
「もう少ししたら」
「遅くなると、道、混みますもんね」
「うん…」
寂しいと素直に言えない。困らせて、わがままに時間を費やして、一緒にいる貴重な時間が減るのは嫌。
でもこの時間が一番寂しい。
目が合うと、彼も寂しそうに微笑む。
そして、いつものように頭を撫でてくれる。
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