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市成は病み上がりの青以にはアサリとホタテと青葱のスープパスタを、万里には鉄板ナポリタンを、それぞれ温野菜サラダを添えて用意してくれた。
万里は鉄板に乗って出てきたナポリタンに目を輝かせた。
「下に卵が敷いてある!」
食欲をそそる香りと湯気にわくわくしながらひと口食べて、万里はその美味しさに目を見開いた。
「美味しい!」
そのままでも充分美味しいのに、下に敷いてある卵と絡めると更に美味しくなる。
「ここのは濃厚なのにしつこくないからクセになるんだ」
青以の「いつもの」はこの鉄板ナポリタンだが、今日は特別に作ってもらったスープパスタに舌鼓を打った。
豆乳ベースの和風スープは滋味深く、病み上がりの身体に沁み渡る美味しさだ。
サラダも冷たい生野菜ではなく、オクラやブロッコリー、にんじん、ヤングコーンなどの温野菜で体が温まる。
「このドレッシングもすごく美味しい!」
万里が頬を緩めてそう言うと、茉由が微笑んだ。
「鷹夜さんお手製の人参ドレッシングなんです」
「手作りなんだ」
ふたりが料理を堪能していると、要がピアノの生演奏をしてくれて、他のテーブルの客たちもうっとりと聞き惚れた。
「あんなに綺麗なうえにピアノまで弾けるなんて……」
万里は美しい旋律を奏でる要の横顔に魅入った。
「叔父さん、曲名わかる?」
「ドビュッシーの《夢》だな」
「素敵……」
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