第5話 喫茶雨音 

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市成は病み上がりの青以にはアサリとホタテと青葱のスープパスタを、万里には鉄板ナポリタンを、それぞれ温野菜サラダを添えて用意してくれた。 万里は鉄板に乗って出てきたナポリタンに目を輝かせた。 「下に卵が敷いてある!」 食欲をそそる香りと湯気にわくわくしながらひと口食べて、万里はその美味しさに目を見開いた。 「美味しい!」 そのままでも充分美味しいのに、下に敷いてある卵と絡めると更に美味しくなる。 「ここのは濃厚なのにしつこくないからクセになるんだ」 青以の「いつもの」はこの鉄板ナポリタンだが、今日は特別に作ってもらったスープパスタに舌鼓を打った。 豆乳ベースの和風スープは滋味深く、病み上がりの身体に沁み渡る美味しさだ。 サラダも冷たい生野菜ではなく、オクラやブロッコリー、にんじん、ヤングコーンなどの温野菜で体が温まる。 「このドレッシングもすごく美味しい!」 万里が頬を緩めてそう言うと、茉由が微笑んだ。 「鷹夜さんお手製の人参ドレッシングなんです」 「手作りなんだ」 ふたりが料理を堪能していると、要がピアノの生演奏をしてくれて、他のテーブルの客たちもうっとりと聞き惚れた。 「あんなに綺麗なうえにピアノまで弾けるなんて……」 万里は美しい旋律を奏でる要の横顔に魅入った。 「叔父さん、曲名わかる?」 「ドビュッシーの《夢》だな」 「素敵……」
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