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薄日
ツー、ツー。
レヴァを見ていた。
美しい姿のまま、目の輝きだけを失ったレヴァ。
眼下、無機質な機械の中に寂たっている。
空気さえもガラスで隔たれ、触れることも叶わない。
何もなかったように伏せられた、エメラルドの宝石の眠る目蓋。
呆然と立ち尽くす私の横には、1人の男がいた。
見知らぬ建物に突然連れてこられたのだ、困惑するのが普通だろう。
「あなたは…?」
「あぁ、私のことですか。名乗り忘れていましたっけ」
静かに頷く。
あの惨劇の中、私を連れ出して助けてくれた人。
レヴァの傷の手当てをしてくれたけど、救えなかったと言って泣き崩れていた人。
優しく私に笑いかけてくれた、眼鏡の似合う人。
どうやら目の前の男は、レヴァの知り合いらしい。
「ハールートといいます。先生、いやレヴァさんの、弟子と言ったらいいかな」
「分かりました」
「ラリアさん。私、君のことはよく耳にしていましたよ。先生に拾われた子、でよう。素直で明るく、魔法使いの素質があると聞いていました。先生は君のことを、至極可愛がっていましたね」
「…」
レヴァのことを聞かされても、心は固まったようでびくともしなかった。
私の心は、完全に乾ききってしまったのだ。
レヴァを失った、私に何をしろというのだろうか。
私の無愛想な様子は当然と言わんばかりの笑顔で、ハールートと名乗った男は口を開いた。
「ところで、ラリアさん」
「はい」
「君は魔法が好きだね」
「まぁ、そうですね」
心の中で、「レヴァが褒めてくれたから」と付け足す。
光輝く、優しさで包むような魔法を次々と繰り出すレヴァ。
その姿に憧れて、私は魔法を知るようになったんだ。
うんうん、と頷いて見せ、男は続けた。
「ラリアさん。私はある魔法学校の先生をしていてね、ぜひ君に入学してほしいと思ってるんだよ。入学試験は少し前に終わってしまったんだけれど、君には魔法についての才能がある。特別に入学させよう。先生が言っていたからね、大丈夫だろう」
突然、私に何を言ってくるのだろうか。
魔法学校に入学?
そりゃあ魔法は好きだし、入れるなんて夢のようだけど―
透明な膜の中に横たわる、大切な人を見る。
心に穴が空いて、もう怒りも悲しみも通り越していた。
この穴を埋めるために、救うために、私ができることは。
「本当ですか、ありがとうございます!頑張ります」
空元気を悟られないように、大きく声を上げた。
知らない男改めハールート先生が、にこにこと笑う。
正直学校なんて不安だけれど、魔法を学んでレヴァを救うことができるかもしれないのだ。
いや、救って見せる。
あのエメラルド色に輝く瞳を、もう一度見るために。
そう思案していると、いつの間にか私の気力は戻っていた。
白い部屋の中、窓から差し込む淡い光が私たちを照らす。
絶対凄い魔法使いになって、貴方を助けてみせる。
だから。
ちゃんと見ててね、レヴァ。
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