澄明

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澄明

「えー、暖かい日差しが降り注ぎ、小鳥もさえずり喚く今日という日。我々は、このカザーヌ王立魔法学校への入学生を大いに歓迎し、心からお祝い申し上げます。えー、貴方たちの活躍が、これからの人類を大きく飛躍させることは言うまでもなく。魔界との関係性、新魔法の発明など、思案すべき課題に溢れているこの時代。ここに集う諸君!貴方たち一人一人の輝きが、この国の未来を動かすのです。えー。覚悟を持ってこの学校に入学したからには、充実した学校生活を送りっ!えー、卒業しこの国で働くまでには、立派な魔法使いになっていることでしょう。えー。ゴホン。えー、貴方たちの目覚ましい活躍に!!!教員一同っ、そしてこのイエギル王国はっ、大きな期待をしております!えー、ぜひっ、力を尽くして頑張っていただきたいっ!!えー、校長からは以上」 この上ないほどの晴天の中、入学式が執り行われている。 規律正しく並んだ新入生の列の、端に座るラリアは内心こう思っていた。 なんというか…。 この校長先生、癖が凄い。 見た目に加えて、なんとも不思議な喋り方をしている。 くるくると巻いた白い髪の毛は凄い爆発のしようだし、眼鏡はずり下がっているし…。 そもそも、あの眼鏡で目は見えているのだろうか。 でも、なんか信頼できそうだな。 幼いころから鍛えられてきた直感は、そう言っていた。 こんな場所に私がいていいのかという不安と罪悪感は抜けないけれど…。 折角ハールート先生が私にくれた恩なんだ、レヴァを助けるためにも頑張らないと。 試験を受けずに入ってきた生徒でない生徒、つまり自分のような特別入学の生徒も、少なからず存在する。 だから安心していいよ、とハールート先生も言っていた。 そうこうしているうちに入学式は進んでいき、今はアルネ・ニールという少年の新入生代表スピーチが行われている。 このスピーチは入学試験で最高評価を得、首席を獲った生徒がやるものらしい。さっき近くの人たちが噂をしていたのが、耳に入ってきた。 噂が正しいとするならば、この少年は首席で入ってきたのだろう。 少し前まで校長先生が話していた場所で堂々と話す少年。 紺碧の短髪に、澄んだ瞳。 抱負を語る少年のその姿は、私には眩しすぎた。 同い年くらいのはずなのに、何であんなに違うのだろう―
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