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真相
私の豹変ぶりに驚いたのか、成田は私をまじまじと見つめる。
「それってどういう意味?」
「……成田くんには教えるよ。加藤くんが死にかけたの……あれさ、私が黒幕なんだ」
ずっと抱えていた秘密を嬉々としながら暴露する。
加藤旭の殺人未遂、それは私と愛が考えたエンターテインメントショーだった。準備をしている間、私と愛はとても楽しい気持ちで満たされていた。
加藤旭への恋心に終止符を打った私。でも、世界は相変わらず同じ展開ばなり。同じく終止符を打った愛も退屈していた。
読書家とyoutuberの共通点は何か面白いものを求めること、毎日が同じことの繰り返しでいつ最終回が来るんだという状況を変えてみようと試してみる。
頭の良い言い方をすれば事実は小説より奇なり。その事実がどこかにないかと私と愛は渇望していた。
実行犯はメンヘラで周りから疎まれていた小川果歩。正直彼女の存在は受験生である自分たちにとっては迷惑で、どこかに行ってほしいと思っていた。
何か問題を起こさせていけば、小川果歩は退学になってどっかにいってくれるだろう。そうすれば、私たちは残りの高校生活を穏やかに過ごせるはずだ。
彼女には相談に乗るという名目で近づき、小川果歩なりの告白をアプローチした。
唯一頑張ったのが、神による意思を主張せよということ。
それをすれば、小川果歩が罪に問われることはないだろうと。
あの事件は私たちが考えた通りに起きて、そして終わった。
小説よりも奇妙な事実として残ったというわけだ。
「ふざけんな! あいつ死にかけたんだぞ!」
成田の反応はもっともだ。普通の人ならばそう思うだろう。
激昂した成田は私の両肩を掴みかかった。
「悪かったと思っているよ。あの光景は今でもトラウマなんだ。だからね、旭くんに謝罪してくて」
「……悪いが教えない。あんたみたいな人の不幸を楽しむやつなんかに」
「そう……」
謝罪場を設けるつもりはないということらしい。そういうことならばと私は反撃してみた。
右肩にある成田の片腕をつかむ。そして彼の手を私の胸元へと押し付けた。
「なっ!?」
「いやあーーー」
痴漢の現場はいとも簡単にできる。私の叫びに反応して愛がカメラを片手に出てきた。
「最低だな、成田。いくら酔いが回っているからと言って勝手に胸を触るとは」
「ち、違……」
「これいい証拠だね。忍と私のお願いをしっかりと聞いてくれなきゃ、今の画像、ほかの子に流すよ」
炎上、暴露、お意見番のyoutuberである愛の黒い笑みがこぼれる。愛の影響力を知っている成田はさっさと私から距離を取る。
「ねえ、成田。旭くんはどこにいる?」
加藤旭という事実がどうなっているのだろうか。
私と愛の小説を超えた存在となっているのか。
それを知る頼みの綱は成田しかいない。
この面白いおもちゃを逃すなんてつまらないもの。
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