いざ、故郷へ

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いざ、故郷へ

 愛と別れた後、私はさっさと週末に向けて帰省の準備を始めた。  実家に帰って同窓会に参加することを母に伝えたり、服を旅行用のカバンに詰め込んだりした。  愛とは一緒に新幹線に乗って北の方に向かう。  新幹線からの景色は相変わらず、のどかな風景が広がっていた。 「さすがに駅前は変わるわね」 「まさかこんな立派なタワーマンションができるとは」 と私と愛は昔にはなかったタワーマンションを眺める。  こんなところに住むとはよほどの金持ちなのだろうかと下世話な話をしながらそれぞれ実家に帰った。  同窓会は今日の夜からだが、その前に高校を見に行こうと愛と約束している。荷物を置いてからさっさと高校に向かった。 「懐かしいね」 「そうだね……卒業してから10年か」  もう二度と高校に足を運ぶなんて思わなかった。  あの時はとにかく逃げたい一心で、さっさと大人になりたかった。  もう二度と行くものかと思っていたが、まさかこうやって再び進むなんて思わなかったのだ。  苦虫を嚙み潰した感覚が胸の中に広がっていく。それと同時にあの時の光景がよみがえってきた。  広がっていく赤い血に、腹を抑えて倒れる加藤旭。加藤旭を刺した小川果歩は思いっきり笑っていた。  目撃者はたまたまいた生徒たち、その後阿鼻叫喚の嵐となってその日の記憶はそれで終わる。 「大丈夫、忍?」 「ああ、ごめん。あの時のことを思い出していた」  加藤旭が殺されかけたのは放課後まであと一時間というところ、移動教室や体育の準備などそれぞれの生徒が次の授業の準備をするというバタバタとしていた中突然起きた。  現場は階段の前、私はトイレから出て教室に戻ろうとしたところで目撃した。  それからは生徒はすぐに帰されて、翌日は臨時休校。しばらくの間、事件を目撃した生徒の中で精神的にやばい人はカウンセリングを受けることになった。あのカウンセリングがなかったら立ち直れなかっただろうなあ。  愛は運が良いことに風邪をひいて休みだった。しかし、かつて片思いをしていた加藤旭が刺されたという知らせはとてもショックなものだったらしく、ふさぎ込んでいた。 「まさかこんな形で終わるなんてね」 と残念そうによく語っていたものだ。  
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