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序 ファーレイン
ファーレインは、息苦しさに目を覚ました。
薄闇の中、目の前に父の顔があった。父の筈であった。
父はファーレインを見ている様で見ていない。口を引き結び、石の様に固まった顔をして自分の手元だけを見ている。彼は今、ベッドに横たわる幼い息子の身体に馬乗りになって、その細い首を絞めている。
ファーレインの目から涙が零れた。それどころで無く、息が出来ない。全力で、もがき、父の手を掻きむしった。しかし全体重をかけてくる父の身体は、びくりともしない。
息が出来ない。
苦しい。
逃れたいのにどうにもできない。
意識が遠退く。
手足の力が抜けて行く。体中の全ての開口部から、血液以外のあらゆる体液が流れ出て行く。命が抜ける様に。
ファーレインの意識が、闇に沈みかけたその時。
白い光が満ちた。
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