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徴税?そんなの外部委託に決まってるでしょ!
教皇に聖戦税の徴収権の権利書を書かせ、宮殿を出た涼花とカワサキはそれぞれ別の理由でホっと息をついた。
「テレジアめとんでもない目で睨みやがって」
「あんな行動をしたんですから、自業自得ですよ。それより良かったですね。教皇様がテレジアさんを呼び止めてくれて」
テレジアが教皇に呼び止められた隙を突いて逃げ出してきた二人は、改めて辺りを見渡しながらゆっくりと町を歩いた。
「しかし、この権利売るにしても相場もわからんし、誰に売るのが手っ取り早いか。徴税に一軒一軒家を回るのは論外だし、どうしようかしら?」
その言葉にカワサキは涼花が民家を回り、箪笥や壺を漁って金やアイテムを尽く強奪していく様を想像し、そのはまり具合に苦笑した。
「なんだかとうz……RPGの勇者みたいですねぇ」
現実でそれをやれば権利に守られた盗賊、悪党、鎌倉武士の類である。
「そんな面倒な事やってられないわよ」
「問題はそこですか?」
常識や道徳と乖離した意見に苦笑いを浮かべるカワサキを余所に、涼花は仕方ないと小さくため息をついた
「多少取り分は減るけど、やっぱり徴収権を売るのが一番手っ取り早いわよね」
「一体誰に売るんですか?」
現代人らしく、特権の売り買い自体理解できないカワサキは頭に?マークを浮かべるようにカワサキの顔を覗き込んだ。
「基本は金を持っている商人、それかその土地の領主、若しくはその土地の敵対領主ね」
中世において軍資金を得る為、徴税権等の特権を売り払う事はよくあった。
涼花はそれに習おうとしているのだ。
今度はいまだ理解しきれていないカワサキに涼花が尋ねた。
「カワサキ、アンタオタカルの家はわかるわよね?」
「え、はい。センパイのいなかった間、オタカルさんの家でお世話になりながら魔術を学んだので一応」
「よし。そこに案内しなさい」
何かあくどい事を思いついた顔で笑う涼花にカワサキはポロリと本音を漏らした。
「凄くよくない気がするんですけど……」
「何か文句あるの?」
睨む涼花にカワサキは慌てて首を振った。
「そ、そんな事ないです。こ、こっちの方にオタカルさんの住まいがありますよ~」
カワサキはオタカルを売る事を選んだ。
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