御曹司との出会いは突然に

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戸惑いながらも何とか足を前に踏み出し、とぼとぼ歩きながら、もう一度、意識をしっかりさせて、記憶を呼び起こし、頭の中で思い返した。 常磐 理仁さん―― 髪型は……そう、前髪は少し長めだった。サイドと後ろを短めにカットして、時折おでこが見えるような無造作なスタイリングが、とても爽やかで清潔感が溢れていた。 整った眉、切なげな印象もある綺麗な二重の瞳、鼻筋の通った高い鼻に、潤いのある薄めの唇。クールな印象と色気を感じる顔立ちは、今思い出しても身震いする。 今まで見たことのない種類の、いわゆる「イケメン」。 イケメン? あの人は、そんなラフな言葉では片付けられない。もっともっと上級で……あの見た目の美しさを形容する単語は無限にありそうだ。 本当に、あんな素敵な人がこの世の中に存在したなんて…… 私は、いつまでもフワフワした感覚とドキドキを止められないまま、無駄に深呼吸して、震える手で名刺をバッグにしまい込んだ。
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