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「だから、違うんだって。好かれるとか、そういうんじゃないの。私はただの惨めな女。悲しそうに見えた私への、常磐さんなりの慈悲の気持ちなんだよ」
「双葉、もういい加減忘れなよ。あんなバカな男のことなんて」
「だけど……」
数年前のあの出来事は、忘れたくても忘れられない。
どんなに前を向こうとしても、いつだって悪夢が押し寄せてくる。
男を知らない私の前に突然現れた高田 雅人という最低な人間。最初は、優しくて会話が上手くて、それなりにイケメンで、とても好印象だった。
たまたま私のバイト先のファミリーレストランに来ていた彼が話しかけてきて、そこからあれよあれよという間に男女の関係になった。
何も知らない私は、本当に……彼が好きだった。
恋人の雅人のことを想うと毎日が楽しくて幸せで、こんな日がずっと続けばいいのにって真剣に願ってた。
なのに――
雅人は、そんな私を裏切った。
まるで土足で私の心を踏みつけるように。
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