消したい過去

5/6
4638人が本棚に入れています
本棚に追加
/179ページ
「だから、違うんだって。好かれるとか、そういうんじゃないの。私はただの惨めな女。悲しそうに見えた私への、常磐さんなりの慈悲の気持ちなんだよ」 「双葉、もういい加減忘れなよ。あんなバカな男のことなんて」 「だけど……」 数年前のあの出来事は、忘れたくても忘れられない。 どんなに前を向こうとしても、いつだって悪夢が押し寄せてくる。 男を知らない私の前に突然現れた高田 雅人という最低な人間。最初は、優しくて会話が上手くて、それなりにイケメンで、とても好印象だった。 たまたま私のバイト先のファミリーレストランに来ていた彼が話しかけてきて、そこからあれよあれよという間に男女の関係になった。 何も知らない私は、本当に……彼が好きだった。 恋人の雅人のことを想うと毎日が楽しくて幸せで、こんな日がずっと続けばいいのにって真剣に願ってた。 なのに―― 雅人は、そんな私を裏切った。 まるで土足で私の心を踏みつけるように。
/179ページ

最初のコメントを投稿しよう!