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朝からご機嫌で家を出る。待っている涼介は機嫌が悪そうだ。謝罪をして、並んで学校へ向かう。
中学は家のすぐ近く。高校は歩いて30分くらい掛かる。その分早く家を出なければならない。来年、翼が俺の通う高校に受かったら、一緒に登校して、長い時間そばにいられるのに。
「あのな、遅くなるなら連絡よこせ。心配するだろ」
「ごめん、どうしても手も目も離せなくて」
「どうした? なんかあったのか?」
心配そうに顔を覗き込んでくる。涼介は本当にいいやつだ。圧倒的に顔が良くて背も高い。可愛い代表が翼なら、カッコいい代表は涼介だろう。
この2人を見慣れ過ぎたせいで、俺の目は肥えすぎた。多少の美人やイケメンくらいじゃなんとも思わない程に。
翼を任せられるのは涼介しかいない。
「翼の寝顔を眺めるのに忙しくて」
「は?!」
「だって、こんなに可愛いんだよ!」
今日撮った寝顔を見せる。
「これ撮ってる暇あったら俺に連絡よこせよ」
「翼の撮影は暇じゃないよ」
「毎日同じ写真見せられる俺の気持ち、考えたことあるか?」
「同じじゃないよ。毎日違う写真見せてるもん」
「俺には同じにしか見えない。それに、俺にとっても翼は弟みたいなもんなんだよ。弟の寝顔見ても何とも思わねーよ」
「弟の寝顔、可愛すぎてめっちゃ興奮するけど!?」
「それは透が特殊なだけ。もっと面白いもん撮ってこいよ。透の自撮りだったら毎日見てやるから」
「俺の自撮りって見て楽しい?」
こいつ、正気か? 翼の寝顔よりも俺の自撮りを見たいなんて。
「それは面白いように撮ってこいよ。めちゃキメてる顔とか、ぶりっ子してるのとか、棒状のもの食ってるのとか」
「ごめん、被写体が俺だとなにも楽しくない。翼にお願いして撮ってくるよ」
「だから、翼の写真はいいんだって! 試しにウインクしてみ!」
生まれてから一度もしたことないよ、ウインクなんて。スマホを向けられるからウインクしてみた。
「ヘタクソ」
見せられた画面には、両目を瞑って顔をくしゃっとしている俺が映っていた。
「涼介はできるの? やってみてよ」
綺麗に片目を閉じて口元を綻ばせた涼介が撮れた。アイドルのファンサじゃん! アプリ使ってないのに盛れ過ぎじゃん!
「うん、涼介が上手なのは分かった。俺の写真はやっぱり面白くないから消して」
「俺はこれがいい」
「涼介は視力検査行った方がいいと思う」
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