1ー1

2/3
前へ
/11ページ
次へ
 朝からご機嫌で家を出る。待っている涼介は機嫌が悪そうだ。謝罪をして、並んで学校へ向かう。  中学は家のすぐ近く。高校は歩いて30分くらい掛かる。その分早く家を出なければならない。来年、翼が俺の通う高校に受かったら、一緒に登校して、長い時間そばにいられるのに。 「あのな、遅くなるなら連絡よこせ。心配するだろ」 「ごめん、どうしても手も目も離せなくて」 「どうした? なんかあったのか?」  心配そうに顔を覗き込んでくる。涼介は本当にいいやつだ。圧倒的に顔が良くて背も高い。可愛い代表が翼なら、カッコいい代表は涼介だろう。  この2人を見慣れ過ぎたせいで、俺の目は肥えすぎた。多少の美人やイケメンくらいじゃなんとも思わない程に。  翼を任せられるのは涼介しかいない。 「翼の寝顔を眺めるのに忙しくて」 「は?!」 「だって、こんなに可愛いんだよ!」  今日撮った寝顔を見せる。 「これ撮ってる暇あったら俺に連絡よこせよ」 「翼の撮影は暇じゃないよ」 「毎日同じ写真見せられる俺の気持ち、考えたことあるか?」 「同じじゃないよ。毎日違う写真見せてるもん」 「俺には同じにしか見えない。それに、俺にとっても翼は弟みたいなもんなんだよ。弟の寝顔見ても何とも思わねーよ」 「弟の寝顔、可愛すぎてめっちゃ興奮するけど!?」 「それは透が特殊なだけ。もっと面白いもん撮ってこいよ。透の自撮りだったら毎日見てやるから」 「俺の自撮りって見て楽しい?」  こいつ、正気か? 翼の寝顔よりも俺の自撮りを見たいなんて。 「それは面白いように撮ってこいよ。めちゃキメてる顔とか、ぶりっ子してるのとか、棒状のもの食ってるのとか」 「ごめん、被写体が俺だとなにも楽しくない。翼にお願いして撮ってくるよ」 「だから、翼の写真はいいんだって! 試しにウインクしてみ!」  生まれてから一度もしたことないよ、ウインクなんて。スマホを向けられるからウインクしてみた。 「ヘタクソ」  見せられた画面には、両目を瞑って顔をくしゃっとしている俺が映っていた。 「涼介はできるの? やってみてよ」  綺麗に片目を閉じて口元を綻ばせた涼介が撮れた。アイドルのファンサじゃん! アプリ使ってないのに盛れ過ぎじゃん! 「うん、涼介が上手なのは分かった。俺の写真はやっぱり面白くないから消して」 「俺はこれがいい」 「涼介は視力検査行った方がいいと思う」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加