2ー2

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 玄関には翼の靴ともう一足。大輔くんの物だろう。リビングに入ると翼と大輔くんが仲睦まじく話していた。 「お兄ちゃんおかえり。涼介くんもいらっしゃい」 「ああ、ただいま。それで? その大輔ってヤローはいつ来るんだ?」  表情の険しい涼介に名前を出され、立ち上がった大輔くんが恐る恐る片手を上げる。 「あの、僕です。初めまして」  ただでさえ恋人の兄に会う事で緊張するだろう。それなのに背が高くて圧倒的な美形が威圧しているのだから、大輔くんのプレッシャーは相当なものだと察する。  涼介が大輔くんに目を向けてその場に座り込んだ。 「おい、翼の彼氏じゃねーか。早く言えよ!」 「言おうと思ったのに涼介がしゃべらせてくれなかったんだよ」 「はー、良かった。大輔くんも悪かったな。ビビらせて」 「あっ、いえ」  大輔くんは首が取れるのではないか、と思えるほど振っている。完全にビビってる。 「涼介くんは何でそんなに怒ってたの?」 「透が他の男と約束があるって言うから。翼の彼氏って言ってくれたらいいのに、大輔くんなんて言うから焦った」  俺がソファに座ると、涼介も隣に腰掛けた。誤解は解けたのに帰らないんだ。 「あの、お会いできて嬉しいです。いつも翼くんにお兄さんの話を聞いていたので」  えっ? 翼が彼氏に俺の話してんの? しかもいつも?  「翼は俺の事なんて言ってんの?」 「優しくて頼りになって大好きなお兄さんだと聞いています」 「うん、僕お兄ちゃん大好き」  大輔くんと翼の言葉に、感極まって瞳に涙を浮かべた。俺も翼大好き! 「分かった。翼、兄離れしろ」  手を鳴らす涼介に全員が注目する。 「兄離れ?」 「そうだ。翼が兄離れしたら、透だって弟離れできるかもしれーねし。俺のために頼む!」  涼介が手を合わせる。翼は不安そうな目を俺に向けた。 「それってお兄ちゃんとお出かけしたり、一緒に寝たり、起こしてもらったりしちゃダメって事?」 「は? お前ら一緒に寝てんの?」 「うん、たまに」 「マジやめて。大輔くんだって兄弟仲良すぎるとヤキモチ妬くよな?」  涼介に同意を求められるが、大輔くんは優しく笑って首を振る。 「僕は一人っ子なので兄弟で仲が良いの羨ましいです。お兄さんの話する翼くんがすごく楽しそうなので、翼くんが幸せなのが1番です」 「分かる! 翼の幸せが俺らの幸せだよね」 「はい!」  大輔くんの両手を握ると、引き剥がされた。 「おい、他の男に触るな。翼も言ってやれ! 僕の男に色目使うな、って」 「え? 僕はお兄ちゃんと大輔くんが仲良しになったら嬉しいよ?」  目を瞬かせて首を傾ける翼の可愛さに、胸のときめきが抑えられない。大輔くんも同じようで、俺たちは『翼可愛い』『翼くん最高』とアイコンタクトで通じ合った。 「俺の味方いねーのかよ」  項垂れる涼介に翼は手を上げる。 「僕は涼介くんの味方だよ。涼介くんがずっとお兄ちゃんのこと好きなの知ってるし」 「じゃあ兄離れできるよな?」 「……一緒に寝るのはやめるよ。夜遅くまでお話してても、ちゃんと自分の部屋に帰るね」 「まず、夜遅くまでしゃべるのやめろよ……」 「……努力する」  翼の言葉に、よし、と頷く涼介。俺の腕を掴んで立ち上がる。 「じゃ、後は2人で楽しんで。俺は透に話があるから」  俺の手を引いてリビングを出ようとする。え? 俺、まだ大輔くんと翼大好きトークしてないんだけど? 楽しみにしてたのに。  涼介の話が終わったら、またリビングに戻ろう。
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