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 彼女の境遇を聞いた時、ティアナはどうしても助けてあげたいと思った。    年の離れた弟の話や家族のように大切に思っているその人のこと、…十代の少女が真に受けるには十分だった。   「おい兄貴!…な、なんであの人がいるんだよ」    声を潜めるティアナは、身長も伸びて当時よりも顔つきが義母に良く似ている。  変わらずノエルを見る眼差しは絶対的な拒絶を含んでいた。    イアンが深夜彼女を家から連れ出せたのは、"あの子の事で話し合うにはどこか別の所へ行かなければ"という考えがあったからだ。  そんな彼女もまさか絶縁状態にある腹違いの義兄が待ち構えているとは思ってもみない。    ぬかるんだ土、湿った空気は雨の余韻だ。東から吹く風が雨雲を流し、濡れた月が弱い光で人気のない広場を照らす。   「私帰りたい。この人がいるなんて聞いてない」    ティアナは自分の感情をコントロール出来ず素直にその場から逃避しようとした。イアンはそんな妹の扱い方をよく知っているので最適な言葉を引き出せる。   「あの子の事なのに帰る?…そんな半端なので覚悟で関わるのは良くないよ」 「半端な覚悟じゃない!」 「だったら話し合いに参加するんだ」    ティアナはグッと喉に力を入れてイアンをギロッと睨んだ。しかしこちらには一切視線を向けず、ノエルの目が少しでも動くとビクつきながら逸らす。   「単刀直入に言うとティアナはあの子に関わらないで欲しい。彼女は王国打倒委員会のメンバーなんだ。」    イアンは二人の間に立って衝突しないよう壁になるつもりだ。ティアナは怯えているだけだがノエルが何をするか分からない、と何処かで考えているのだろう。   「王国打倒委員会って事は聞いてんだ。…その大切な人も仲間だって言ってたから…」    ティアナは相手がテロリスト集団だと認識した上で助けたいのだと声を上げる。まだ未熟な精神は少し自分と重なる事があると相手を分身のように扱うのだ。   「あんたの……えっと、ノエルさんの友人が関わってるって聞いた。」    イアンはそれに口を出さず、ノエルに話すよう促した。全く出来た義弟であるが、男にとって少なくとも“家族”は優先順位が低い。つまり彼とは根本的に目指す方向性が違う。…しかしノエルもイアンも一致している点がある。    それは不死身の男に関わらせたくないと言うことだ。   「確かに俺が関わっているとも言える」 「…ッほら、やっぱり…!今すぐレアの仲間を解放しろよ!」  
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