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引っ付いた瞼のスキマから見えた空間に新たな光が差し込まれたのだ。そこから覗いた顔が見知ったものだとは思いもよらずに幻覚では無いかと疑った。
「…聖…女様??」
「スカンク、生きていたのですね。心配していたのですよ」
「助けに…来てくださったんですね…!」
ふっと緩んだ口元が、やけに大きく切れ込みが入ったように見える。ぽっかりくり抜いたそこから出る言葉が素直に吸収されず、スカンクは飲み下せず乾いた空気で肺を広げた。
ギリギリと痛む体で力を振り絞った右腕をその微笑みに向けて差し伸べる。少しの疑いは掠めていたが余裕の無さが盲目にさせていたのだろう。
バシンッと払われた掌。
ガクンと視界が地面に落ちて、再びスカンクは体勢を崩した。凄まじい腹の痛みとは別に右手にジンジンと薄い痛みが広がる。
「…ッな、助けに来てくれたんじゃ…」
見上げたことを後悔した。そこには母親ではなく私利私欲に塗れた女の顔をした物体がいたのだから。
「助け?…」
開け放たれた扉の先からもう一つの影が揺れ動いた時、スカンクは自分の居場所など初めから無かったのだと気がついた。
ゾロゾロと狭い室内に入ってきた同じ顔同じ服装の角刈りの男達と、その飼い主のような小柄な女。
「ご婦人、ソレが例の幹部会員ですか?」
「ええ。王国打倒委員会で悪魔…不死身に接触したのは彼らが最後」
カンムリワシの紋章は帝国民なら誰でも知っている。帝国宮内庁の人間だけが許された印。
何故そのような連中と聖女が隔たり無く会話しているのかスカンクの頭では整理が付かなかった。
(…そもそも俺たちは帝国警察にマークされているのにどうやってここまでやってきたんだ?)
「助けに来たわけじゃないならどういう事だよ!!」
「口の利き方!!」
思わず叫んだ男に聖女は更にヒステリックに拳を振り上げた。ギリギリと歯を見せながら擦り合わせ正気とは思えない。その歯の隙間からブツブツと念仏のようなものを低い声で唱える。
「まあまあ、ご婦人。彼は大切な導線なのだから」
小柄な女がにっと口角を上げて垂れ下がった髪を耳にかけと骨ばった輪郭が露わになる。
「おい!俺を…どうするつもりだよ!」
「お前は不死身を誘き寄せる為のエサだ。上手く行けば直ぐに解放してあげるよ」
「…不死身のエサ…?」
醜い大人達は欲望に忠実に彼の希望を貪り尽くすつもりだ。それがわかっていた所で地面に這い蹲るスカンクには手立てが無かった。
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