13人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
三話 秘密基地
セクスティリア・シラナよりセクスティリア・カエソニアへ文をしたためます
お元気ですか?
私は学び舎にも慣れ、つつがなく過ごしています。
お姉様のお手紙嬉しかったわ。なのに返事が遅くなってごめんなさい。
季節が巡ったくらいにと思っていたのに、半年も経ってしまいました。
それで今日は、遅くなってしまった学び舎のお話をしようと思います。
私の通う学び舎は、水道橋を越えた屋台通りの先にあるの。
ここは上位平民の商家が提供する屋敷を利用していて、医師も在中している整った場所よ。
貴族から平民までが通っていて、教師も教科ごとに専門の人がいるたいへん恵まれた環境なの。
平民は十二歳までに初等教育を終えて辞める人が多いから、それ以上を学ぶのはやはり、貴族や上位平民が中心ね。
でもここは、ほかの学び舎にくらべたら、まだ多い方なのですって。
陽が昇ってから昼までしかないから、学ぶ時間は少ないはずなのに、家で家庭教師と勉強するよりも学べることが多い気がするのは、色んな子たちがいて、沢山お話を聞けるからかしら。
庭に椅子を並べ皆で勉強するのも、初めは戸惑ったけれど、今はたいへん気に入っているのよ。
だから私のことは心配しないで。
それよりも、お姉様にいただいた猫ちゃんに元気がありません。
お姉様がいなくて寂しいのかもしれないわ。あまりご飯を食べてくれないの。
この子の好きなものを教えてくださる? 今度それを与えてみます。
淑女の鏡たるセクスティリア・カエソニアへ、貴女を敬愛するセクスティリアより
最初のコメントを投稿しよう!